確かに・・・と思って読んだところです。
P193
保江 例えば聴覚ですが、耳から音が聞こえると、脳の側頭葉の聴覚野がまずデータを処理して、大脳皮質の、いわゆる意識のほうに送られる。
そして、目から入ってきたものは、後頭部の視覚野がデータを処理して、それから大脳皮質に送り込んで意識の中にこういうものが見えていると伝えている。
ただ、そのどちらにも網目状の網様体という神経組織があって、データを送り込んでくる途中にそいつが手を抜くんです。
というのも、聞こえたデータ、見えたデータを全部大脳皮質に送っていたら、脳がパンクしてしまうからです。
情報が多すぎて、やがててんかん状態になって泡を吹くことになる。
だから、網様体が途中で8割をカットして、2割ぐらいにして送ってくれるから、こうやって普通に日常生活が送れているんです。
情報の取捨選択の方法としては、単純で日常的によく見る、既視感があるようなデータは優先的に送ります。
一方、突拍子もないもの、初見のものは、データをそのまま脳に送るとパニックになるから、なるべく送らない。
P215
Birdie マジックだったとしても、それが超能力だと信じることによって、その人の力が目覚めるかもしれない。
例えば、カードを広げて、
「今から透視します。……あなたの選んだカードは、これですね」と言って当てる。
「どうやってやるんですか?」と聞かれても、
「爪でカードに跡をつけましたから」なんて、マジシャンはタネ明かしをしませんからね。
「透視能力です」と言います。
それで、
「じゃあ、僕もやってみていいですか」と、タネを知らずにやった人が、実際に五回連続で当ててしまうようなことがあるんです。
これって、何かが目覚めているんだと思うんです。
その人は、その現象自体を受け入れたから、何かが目覚めたんです。
カードは混ぜていますし、印も何もないのに、「どれですか」と言ったら「これだ」とわかる。
五回、十回、連続で当たっていく。
これはもう、覚醒ですよね。
保江 そういう方が、実際にいたんですね。
Birdie いたんですよ。
僕が、そうした現象を見せたから、自分にもできると目覚めた。
スプーンを曲げるにしても、物を当てるにしても、催眠術を織り交ぜて、どこからがトリックで、どこからが本物かというのは曖昧にしてやっていますが、受け入れた人が目覚めるということはありうるんです。
マジシャンには、マジックのタネを解説していますけれどもね。本当のことを言っても、マジシャンは信じませんから。
仮に、「イメージで引かせてます」と言っても、絶対に信じないのでね。
スプーンを曲げるときも、「腰のあたりの死角に入れて、こっそりと曲げて出しなさい」と言っているんです。
でも、そんなことを聞かずに見た人は、「なるほど、人間ってこんなことができるんだ」と納得して、スプーン曲げを見てから1週間後ぐらいに、
「Birdieさん、私も曲がりました」って、グニャグニャになったのを見せにくるわけです。
だから、こうしたショーは、もちろん楽しいからやっているのもありますが、お客さんがそれをすんなり受け入れて、思わぬ能力が開花するという瞬間が見られたり、驚かされたりするのを楽しみにやっている部分も大きいです。
保江 素質がある人は、世の中にたくさんいそうですからね。
自分の常識がストッパーになっていたのが、非常識なものを見て、それが外れるということでしょう。
僕も、道場でちょっとした武道を教えていますが、本当のところは何の理屈も技もないんです。
Birdie そうなんですね。
保江 こうやれば、だいたい倒れる。なぜかという理屈はよくわからない。
ところが、本にしてくれとかビデオにしてくれとかいうときに、理屈がないと世に出ていかないんです。門人も、理屈がないと教わった気にならない。
仕方がないから、適当に、物理的にはとか言って(笑)。
Birdie 同じ穴の狢じゃないですか(笑)。
僕も、スプーン曲げとか、カードを当てるビデオを出してくれとか言われたときに、「とにかくイメージを強く持ってください」なんていう解説はできないから、テクニックとして、「スプーンはこういう角度で持って」とか、適当、デタラメです。
保江 結局、そうなんですね。
僕とBirdieさんの波長が合うのは、そういうことなんですよ。
Birdie デタラメを言っている者同士。
保江 でも、そのデタラメのほうを信じるんですよ、みんな。
Birdie そうそう、デタラメでも、理屈づけがあれば共感される。
保江 理屈やタネがあったほうが、よりどころとしてやりやすいんでしょうね。
Birdie そうだと思います。
保江 デタラメ、これが結論。
Birdie デタラメ、大事ですね。