岡本太郎さんにかかわりのある方々と平野暁臣さんとの対談集。
こちらは一青窈さんとのお話で、印象に残ったところです。
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平野 さっきも言ったけど、一青窈の歌はサンタナとおなじで5秒聴けばすぐわかる。
一青 そうですか?(笑)
平野 まちがえようがない。
一青 声で?
平野 うーん、たんに声だけじゃないと思うなあ。なんだろう?ほかの歌手となにがちがうんだろう?
一青 でもそれって、鬱陶しいとも言えませんか?
平野 (笑)個性ってそういうものだからね。窈さんは歌うときに特別に意識していることってなにかあるんですか?それとも自然にああなってるの?
一青 自然にやってます。自分に嘘をつかないように、と思いながら。
平野 わきあがってきた感情に正直に、っていうこと?
一青 ええかっこしいにならないように。「人からこう見られたら自分は得するだろう」とか「よく見られるだろう」っていうようなことは歌詞のなかでは絶対しないし、歌い方でもしないようにしています。
平野 太郎と敏子がよく使っていた言葉に「平気」っていうのがあるんですよ。敏子だと「太郎さんは平気でやってたのよ」とか「あなた、もっと平気でやりなさいよ」とか。
一青 ええ。
平野 その意味は「気負いもしなければ遠慮もしない。媚びもしないし気遣いもしない」ということ。要するに小賢しい計算なんかするなっていうことなんですね。
一青 はい。
平野 人からどう見られるとか、どんなふうに評価されるんだろうとか、そういうことはぜんぶケトバして、自分の価値観と美意識を信じて、それに正直にっていう。
一青 裸ん坊になるってことですね。
平野 素っ裸で生きるってことです。
一青 「無邪気」でもないし「裸」でもなくて、「平気」なんですね。おもしろい。
平野 ふたりとも好きでよく使ってました。