こちらの本にも木村さんの話が紹介されてました。
P189
心理学に関する本を読んでいたら、ちょっと面白い寓話が載っていましたので、紹介します。
さあ、あなたは、この話に何を感じるでしょうか?
あるところに、スイカづくりをしている農夫がいた。
性格は欲張りで意地悪。
そんな彼、ある日、自分のスイカ畑から、毎晩1個ずつスイカが盗まれていることに気がつきました。
ひと晩にたった1個とはいえ、どうにも許せない農夫。
考えた末、意地悪なことを思いつきます。
畑にあるスイカの1個に毒を入れて、畑にこんなメッセージの立て札をしたのです。
「スイカ泥棒に告ぐ!この畑のスイカのどれか1個に毒薬を入れた。スイカを盗むのは勝手だが、命の保証はないものと思え!」
翌朝。農夫が畑にやって来て見てみると、どうやらスイカが盗まれた形跡がない。「してやったり」と喜ぶ農夫。
ところが、ふと気がつくと、こんなメッセージが書かれたメモが残されていた。
「農家の方へ。私もお宅の畑のスイカのどれか1個に毒を入れました。お互いに手を組みませんか?でなければ、スイカは1個も出荷できませんよ」
いかがですか?
あなたは、この寓話にどんな感想を持ちましたか?
いろいろな解釈ができる話だと思いますが、私は、こう思いました。
「毒に対して毒で対抗しても、何も解決しない」
そして、ふと、世界で初めて完全無農薬無肥料のリンゴ栽培に成功された木村秋則さんの、「カラスと折り合いをつけた」という話を思い出しました。
リンゴ栽培にとっての大敵であるカラス。
しかし、木村さんの畑には、なぜかカラスがいない。
ある人がその理由を聞くと、木村さんはこんな話をしてくれたというです。
「あるとき、カラスの子が巣から落ちて、親カラスが鳴いていたので、そっと巣に戻してあげた。そしたら、それ以来、カラスはいたずらしなくなったの」
それどころか、別のカラスたちが木村さんの畑のリンゴに手を出そうとして近づくと、くだんのカラスが追っ払ってくれるのだとか。
なんとカラスの恩返し!ウソのような本当の話です。
話をスイカ泥棒の寓話に戻すと、悪いのはスイカ泥棒です。それは間違いありません。・・・
しかし、その「悪」に対して、農夫もまた、「悪」で対抗してしまったから、新たな毒が返ってきてしまった。
・・・
もし、寓話の農夫が、木村秋則さんのような大きな心で、こんな立札をしていたらどうなったでしょう。
「スイカ泥棒さんへ。腹が減って仕方がないなら、毎日、スイカを食べてよいから、ウチの畑で働きませんか?」
泥棒を雇うなんて!という話はひとまず置いておいて、こんな立札をしていたら、話の展開(未来)は少し良い方向に変わっていたように思うのです。