わたしをひらくしごと

わたしをひらくしごと

 他の本を探していて偶然見つけた「わたしをひらくしごと」。

 とても面白かったです。

「はじめに」にはこのように書かれています。

 

 自身を振り返ると、社会人になろうというとき、既存の組織に所属して、そこの一員として働くという以外に未来の自分を想像できませんでした。もちろんそれも働き方のひとつです。でも、他にも選択肢がたくさんあるなんて、そのころは知らなかった。自分で自分の仕事がつくり出せるなんて、考えてもみなかったのです。

 なのに、気づけば。身のまわりの同世代には、他でもない、その人でなければできない仕事をしている人がたくさんいました。職種の範疇からはみ出ている人や、活動をひとことで説明できない人や。いわば、その人自身が、その人の肩書きなのです。仕事と人生が、分かちがたく混ざり合い、溶け合っている。

「働いて生きること」は、人の数だけ、物語があります。この世の中ではいろんな場所で、いろんな人が、いろいろに生きている。そうか、どうやって働き、どうやって生きるかは、限りなく自由なんだ!全部がそれぞれ違うなんて当たり前のことなのに、まるで大発見のよう。良い悪いではなく、ただ、いろんな人のいろんな世界観があるということ。そして、そういうものの集成で社会ができているということ。

 これは、いままで私が出会った「自分が肩書き」の人たちに、彼らがどのようにしてそうなったのか教えてもらうインタビューです。きっと言葉の端々、行為の折々に染み出しているはずの、その人がその人たる所以を知ることができる楽しみ。そしてこの取材をとおして、私自身もまた数多ある物語の一片となるのかもしれないと気づけたのも、嬉しいおまけです。

 

 こちらは雑誌の編集などをしている、ルーカス B.B.さん。アメリカ出身で大学卒業後日本に来てそのまま定住したそうです。

 

P257

―雑誌づくりはネットワークづくりだとも思うけど、どうやって人間関係をつくってる?

 

みんなそれぞれおもしろいものもってると思うから、それを探るのが好きというか、その人のいいところを取り出す、好奇心だね。

9歳下の弟がいるんだけど、アメリカにいたとき、弟たちのサッカーや野球のチームのコーチをよくやってた。みんなすごく練習して、コミュニケーションをとって、弱いチームだったのにチャンピオンになったりする。それってみんなのいいところを引き出していいチームにしていくってことでしょ。

 

―それに、ルーカスって人たらしだよね。憎めなかったり、助けてあげたい気持ちにさせるところがある。

 

きっと、僕はいろんなことができないからだね。すごいできる何かひとつはないけど、浅くいろんなことに興味もったり、したりはできるから。

 

―できる人を知っていて、その人に頼めばいいんだものね。そうじゃないと雑誌はできない。

 

そこがおもしろいよね。でも、本はメッセージとか社会性をもたせて、人のメンタリティを変えていける力がある。本は好きでつくってるんだけど、もっといい世界をつくっていきたいなってすごく思う。

 

―壮大だ。

 

人間、それぞれ思うことはいろいろあるかもしれないけど、僕らがこの場所にいる間に、自分ができる何かしらで、できるかぎり世界をよくしていく。僕がいるから少しでも世界がよくなる、ミックさんがいるから世界がちょっとよくなるっていうふうに。