「違うこと」をしないこと

「違うこと」をしないこと (角川文庫)

 文庫になる前に一度読んだのですが、最近改めて大事なことだと思い、再読しました。

 

P6

 自分の人生は、自分のものです。

 どんな人であれ、自分そのものを生きることが大切。

 そのためには、まず自分に正直であること。

 そして、他人と正直にコミュニケーションすること。

 結局はそれしかないんだってわかっていても、これが案外難しくて、振り返れば、私も失敗の連続でした。

 ・・・

 自分を納得させようとする時って、たいてい、本来の自分を見失っている。ごまかし続けていると、どんどん苦しくなるし、何かが立ち行かなくなったりする。本来の自分とズレてるから、それがちゃんと現実に反映されるわけです。

 

P14

 本来の自分を生きるには、違うことをしないことが大切。

 じゃあ「違うことをしない」って、どういうことなんでしょうね。

「したいことをする」っていうのとすごく似てるけど、微妙に違うんですよ。言葉で説明するのがちょっと難しいのですが、ヘンに力が入ったり、ちょっとでも圧がある感じがあったら「あ、こういうことじゃないな」と思う感じ。

 もっとこう、流れみたいなものに乗っていく感じ。その瞬間にする行動はほんとうはいつもひとつだけ。それになるべく近くしていく感じ。

 イメージとしては、サーフィンに似てるかもしれない。

 たとえば何かお誘いがあった時に「なんとなく気が進まないな」と思ったとするじゃないですか。でも「これは義理だから行っておこう」とか「いつか役に立つはず」って行ったりすると「違うこと」になっちゃう。

「なんかいやだ」じゃ理由にならないって思いがちですよね。だからつい、もっともらしい理由をつけて判断しようとするから、複雑になっちゃう。

 大切なのは、自分にとってホントにダメだと思うことをしないでいること。

 こればっかりは理屈じゃなくて体感だから、やってるうちにだんだんわかってくると思いますよ、その感じが。

 とりあえず「なんかいやだ」と思ったら、その感覚をスルーしないとかね。

 大切なことです、とても。

 

P93

 自分そのものを生きるっていうのは、だからラクして成功するためのノウハウみたいなことじゃなくて、自分が置かれた環境をどうやって生き延びるかっていうことでもある。それって、きっと誰にとっても切実で、大変なことなんだと思います。

 

P165

 自分を生きるっていうのは、これをすれば幸せになれるとか、これをやめないと不幸になるとか、そういうことでもなく、自分を生きたからって、悲しみはなくなるわけではないし、つらさが減るわけでもない。

 人生は、誰にとっても、基本的につらいものだから。

 それでも自分を生きていけば、生きることはきっと豊かになる。そこから開けていくひとつひとつの景色は、ひとつ残らず、あなたにしか見えない、あなただけのかけがえのないものだから。

 ・・・

 とりあえずたった今、素直に本当にやりたいこと、ほしいものは何ですか。

 まずは、そこから始めていきましょう。

 

P177

Q 「自分を生きる」と言われても、そもそも自分のことが好きになれません。どうしたら好きになれますか。

 

 好きじゃなければ殺してもいいの?

 捨ててもいいの? と思えば、

 別に好きにならなくてもいいんだと思えると思います。

 

P232

「違うこと」をしないって、イヤなことはしないってことですよね、とか、違うと思うことにはうなずかないってことですよね、とよく書かれたり言われるが、全く違う。

 よく言われるように、「運命は決まっているけれど、人は完全に自由だ」という矛盾した話と同じで、今この瞬間にその人の個性がすることはひとつだけなのだ。赤ちゃんはいつもそれをしている。大人になると選択肢があるかのような錯覚をするものだが、ほんとうはない。そのくらい厳密なのだ。それを完全に無意識でできたらお釈迦さまやキリストさまになってしまう。だから、せめて近づけていく努力をするだけ。

 私の言っているのはそういう話であって、決して「イヤなことはしなくっていいんだよ、自分を愛そう!」なんていう話ではないのだ。

 でも、市井の無名の人の中には、けっこうたくさんいる。独自の道で己を極めてほどんと悟りに近い人が。だから人間って捨てたものではないと思う。