あったかい

ハーモニーの幸せ (角川文庫)

初女さんに続いて、こちらもあったかいサンディー先生とのお話です。

P202
 ・・・フラのスタジオに来るとみんなサンディー先生のファンになってしまう。
 サンディー先生は、フラのレッスンの前に「オリ」というハワイ語祝詞のようなものを唱える。その「オリ」を唱えるときに、みんなで手をつないで丸く輪になる。そのときに、先生はいつも呟く。
「みなさん、この一週間、いろいろあったでしょう。悲しいこともあったかもしれない。だけど、みなさんはこの一週間で成長しているの。もう一週間前のみなさんとは違うのよ。いっしょうけんめい一週間生きたから、先週とは違う存在なのよ」
 深呼吸して、身体のなかの沈んだ気持ちを吐きだして、「マナ」と呼ばれる生きる力を吸い込んで、それを再びみんなに分け与えるために外に吐き出す。
「人間っていうのは、生きるかぎり成長し続けるすばらしい生き物なのね、私たちは、そういうすてきな存在なのね」
 先生はまるで自分に言い聞かせるみたいに言う。
「自分の内側をクレンズして、そして、きれいになったからだのなかに、命の源であるマナを、思いきり吸い込んでみましょう」
 そう言われて、空気を吸い込むとき、なんだろう、ほんとうにすうっと、自分のなかに光が入ってくるような気がする。
 そういう気分になるくらい、先生の言葉があったかくて優しいんだ。
 それからレッスンが始まるのだけど、私は「一週間前のあなたとは違うのよ」って先生が言った言葉に、毎回ひどく感激してしまって、なんか涙ぐんだりしちゃうのだった。
 そういうことって、普通に生きていたら誰も言ってくれないし、誰も褒めてくれないことだけど、そうだよなあ。人間なんて一週間いっしょうけんめい生きれば、それだけで変われたりするんだよな。
 そういうとても柔軟で美しい生き物なんだよなあ。