インドでの活躍

世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う

 

 ナグプールで活動を始めた佐々井さんは、どんどん人気者になっていったそうですが・・・

 

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 ・・・村や町に寺を建て、社会事業に力を尽くす佐々井さんらの活躍で仏教徒の数は急激に増え続けていった。名声が轟いても偉ぶることなく、貧しい人々からはお布施は受け取らず、もらってもより困っている人に分け与えてしまう。

 しかし、面白くないのは、佐々井さんが来る前から活動していた近隣の僧たちだ。彼らはいくら貧しい家であろうとお布施を要求し、お供え物も当然のように持ち帰ってしまうため、民衆からはありがたがられなくなり、次第にどこの家からも呼ばれなくなってしまった。

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 人気のない坊主たちは、悔し紛れに佐々井さんの悪い噂を喧伝するようになった。さらに、ヒンドゥー教イスラム教などの他の宗教団体も、増え続ける仏教徒に恐れを抱き、あることないことを秘密警察に通報し、佐々井さんを執拗に尾行するようになった。

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 そんな悩みとは裏腹に、佐々井さんの名声はさらに高まっていく。ナグプールに来た翌年に行われた全インド仏教大会では、まだ末席ではあったが、それから11年後の1980年に開催された第2回全インド仏教大会では、何十万もの信者が集まる式典で、佐々井さんを大導師とすることが会議で決定された。大導師とは、開会演説や入信希望者への授戒など文字通り、大会を一番、先頭で導く重要な地位である。

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「なんで、外国人の俺が選ばれたのかって?仏教徒が集えば、お布施も莫大だが、その金を巡って各派閥がもめにもめて皆、うんざりしていた。それで俺に白羽の矢が立ったのだ」

「佐々井さん、大出世ではないですか!ナグプールに来たとき、『金もない、知り合いもいない、俺は野良犬ノラクロのようなものよ』と言っていたけど、漫画のノラクロもどんどん出世して、最後は隊長になるんでしたっけ?」

「おう、まさか一文無しのノラクロ、乞食坊主がそこまで辿り着けるとは夢にも思わなかったぞ。勘違いをするな。自分が目立って偉くなりたいわけではないぞ。しかし、俺が来た時には1つも寺がなかったナグプールに、この数十年で寺を200以上建て、僧もずいぶんと増やした。もちろん、俺一人の力ではないがな。いろいろあってしばらく凹んでいたが、沿道で手をちぎれんばかりに振ってくれる民衆を見て、心の中で、『秀嶺、よくやった、よくやってきたぞ』と自分を褒めてやりたい気持ちになったんだ」

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 佐々井さんが慎重になるのも無理はない。何しろ半世紀前にナグプールに住み着いてからというもの、行く先々でいつも誰かに狙われている。インド国内にいくつかあるテロ集団の暗殺リストには佐々井さんの名前が常に上位に載っているらしい。激増する仏教徒を抑え込みたいヒンドゥー教徒や佐々井さんの活躍を妬む僧侶、佐々井さんが国に盾突くのが面白くない政治家など、佐々井さん曰く「もう数えきれないくらい」知らないうちに恨まれているのだった。

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 暗殺未遂は大きな事件だけで3回あった。・・・

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 そして、つい最近も暗殺されそうになったという。・・・

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 ところが、俺はナグプールの病院にいるはずなのに、意識の中ではヒマラヤの病院で寝ているんだ。担当の看護師は顔を見せてくれないが、後ろ姿や横顔から美人とわかる。それでこんなことを言うんだ。

『あなたは、今まで頑張ったから極楽に行けます』と。

『ダメだ、俺はまだ死ねない!やらねばならないことがたくさんあるんだ!』

『生き返ると、何倍も苦しいことが起こるから、もう死んだほうがいいでしょう』

『それでもいい!シャバに戻せ!』

 するとな、ス~ッと看護師が私の身体の中に入ってきた。彼女は看護師の恰好をしていたが、今思えば観音様だったんだな。その頃、現実世界では俺の呼吸が止まっていたらしく、・・・何分経ったか知らないが、急にまた息を吹き返したらしい。こんなことはめったにないそうだ。・・・ワッハッハ、観音様が生き返してくれたんだ」