みんなの力で

 

大谷翔平 挑戦

 大谷翔平さん、人間性がすばらしいなと思い、このMOOK本も読みました。

 こちらは地元岩手日報社の方の記事です。 

 

P31

 印象深いのは2012年2月半ばのセンバツに向けた静岡合宿だ。・・・

 彼にはどうしても聞きたいことがあった。センバツが決まり、取材陣に囲まれる彼の言葉が変わってきたからだ。おそらく意識して仲間のエピソードを挟んでいた。持ち球について質問が飛べば左腕小原大樹の名を挙げ「大樹は自分よりも制球力があり、あのカーブは打ちづらい。打席に立つと分かるんです。スライダーは直球の軌道から変化するが、カーブは目線から一度外れて浮くから迷う。それで自分もカーブを磨きました」と説明する。

 投球ホームの話になると、同じ右腕の佐々木毅が登場。大谷は「自分よりも毅の方がいいフォームで安定している。なぜ速い球が投げられるかは結局リリースで球を切る速度。腕を伸ばし、できるだけ前で投げることを意識している」と答えた。

 全国から集まった記者陣も面食らったに違いない。小原って誰。佐々木毅って何番なのと。

 まだ17歳だ。「自分の言葉がどう扱われていくか。自問自答を繰り返した末に『仲間を語る』にたどり着いたと推測するが、どうだろうか」と問い掛けると、大谷はこちらに真っすぐな目を向けたまま、「えぐい質問しますね」とニヤっと笑った。「野球は一人じゃ勝てない。全員が絡み合い、出塁も走塁も一つのプレーに何人もが協力する。みんなの力でセンバツに行ける。甲子園では、そこに自分の力を加えたい」と闘志を燃やした。

 出塁や走塁という場面で、何人もが協力して一つのプレーが成り立つと認識している高校球児はどれだけいるのだろうか。聡明で思慮深い背番号1の言葉に驚かされるばかりだった。