田口壮さん

脇役力<ワキヂカラ> 生き残るための環境づくり (PHP新書)

オリックス二軍監督の田口壮さんの本を読みました。
自分に何を求められているか、それを見極め貢献する、脇の方にいる自分の立ち位置を客観視してベストを尽くす姿勢が素晴らしいと思いました。
また印象的だったところをメモします。

P12
 それはいまから一年前。二〇〇九年のシーズンが始まる前のことでした。
 ある人は「今季限りでの引退の可能性は?」と聞いてきます。
 ある人は「マイナーに落とされたらどうするんですか?」と質問してきます。
 そのとき、田口壮、満四十歳。自分で言うのは少々せつなくなりますが、たしかにスター選手ではありません。主役か脇役かの二者択一ならば、ぼくの野球人生は、まちがいなく脇役のそれだといってよいでしょう。
 ・・・
 ・・・「マイナーに落とされたらどうするんですか?」という質問は、三月までのキャンプ中に、一部のマスコミ関係者たちから受けたものです。この質問の裏側には、「マイナーに落ちたら野球人生の潮時、つまり引退だろう」という先入観が見え隠れしていました。
 よく考えると不思議な質問です。でも、おそらくはだれもがそう聞きたくなる、野球人生のひとつの要所を迎えていたのでしょう。
 しかし、ぼくの答えはシンプルでした。マイナーに落とされたらどうするか。決まっています。もう一度メジャーに上がれるよう、マイナーで野球と向き合うだけです。野球が好きなかぎり、野球がうまくなりたいかぎり、ぼくは現役でありつづけたいのです。
 ・・・
 常日ごろからぼくが抱いていた思いは、最終的に、自分が学んだり経験できたりしたことを日本にすべて還元したいということ。ならば、マイナー契約は、これまでとは一〇〇パーセント違う経験ができるはずで、日本に持ち帰ることのできる財産のひとつ。そんな貴重な経験を逃す理由が、ぼくには見つからなかったのです。