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本を読むのが苦手な僕はこんなふうに本を読んできた (光文社新書)

 こんなことがあったんだ、と興味深く、曲を聴いてみたくなりました。

 

P175

詩的で超常的な調べ 霊界の楽聖たちが私に授けてくれたもの

 すでに亡くなった著名楽聖が、次々と著者に口述筆記をさせながら霊界から新作を送ってくる。その一団のリーダー格のフランツ・リストが計画した霊界プロジェクトであり、それを受信して克明に記録したローズマリー・ブラウンの自伝的エッセーがコレ。

 リストとの出会いは彼女の7歳の時で、すでに以前から死者の霊を見るのは日常だった。幼い彼女はリストの名も知らないが、彼は生きていた時は作曲家でピアニストだといい、「君が大きくなったらまた会いに来る。そのときは君に曲をあげよう」という言葉を残して40年後、再び現れ、プロジェクトが始まる。彼女は口述筆記の準備は整っていたが、専門的な音楽教育は皆無、ピアノは弾くものの技術は不十分、もっぱら曲の口述筆記が中心。それゆえ、苦痛を伴う激務であった。

 その結果、数百の楽曲を残した。霊界の彼らの目的は彼女を作曲家として世に送ることではなく、死んだ作曲家たちの新作の存在を実証させ、世に認識させながら、「この世の人々の考えを変えたい」という天界芸術作戦(?)にあった。

 さらにリストは彼女を媒介に死後の実相を広く世の中に伝えると同時に、現世の人間の生き方にも示唆を与え続けた。当然ながら彼女の行為に対し懐疑的な人々も多いため、彼女は自分に起こった出来事を克明に忠実に正直に語り続ける、そんな姿勢が本書の大半を占めているといっていい。しかし、イギリス社会には心霊問題に対する理解がかなり浸透しており、BBCが彼女の特番を組んだり、バーンスタインが好意的に彼女に接したりし、複数の出版社が楽譜を出版、自筆譜は大英図書館に寄贈されている。

 本書を読むと同時に、CD発売されている「ローズマリーの霊感」収録のベートーベン、シューベルト、リストらの曲を聴いた。偏見のない音楽家の感想を聞いてみたい。

ローズマリーの霊感~詩的で超常的な調べ