ミラクル

　お金を持たずに生活する実験を始めてから起こったミラクルについてのお話です。

P99

「新しい生活」の中では、数え切れないほど意外な出来事が起こった。私は自分でそれを「ミラクル」と呼んでいたのだけれど、他の人には何のことだか分からないだろうから、私は人との会話の中では「意外な出来事」というふうに表現していた。人を驚かせたいわけではなかったからだ。・・・

　食糧問題に関しては、これまで以上に多くのミラクルが起こった。例えば頭の中でチョコレートやその他の美味しいもののことを考えると、しばらくの後には本当にそれらを手に入れることができたのだ。時々、それらは文字通り道に落ちていたのだ。私の足元に。ほかにも、練りハミガキやシャンプーが底をついてきたと思った時、その直後に知り合いが袋を提げてやってきた。そして「いらないものは誰かにあげて」と言ってその袋を私の手に握らせた。彼女は風呂場の戸棚を整理して、二重三重に持っているものを選り分けたのだそうだ。そして、その袋の中には本当に私の必要なものが入っていたのだ。・・・

　例をもう一つ。ある時歩いていて、これは靴底がもう絶対に薄くなっていると感じられてきた。新しい靴のメドはまだ立っていなかった。冷えた足で〝私の家〟に帰ると、玄関にポリ袋が置いてあり、中には「買ったのだけど、合わなくて。あなたに入るといいのだけれど」というメモと共に３足の真新しい靴が入っていた。私はこのような不思議なことを毎日のように体験していたのだ。このような出来事は、別世界から私への合図だと思っている。あなたは一人ではない、助けられ支えられているのだ、ということを伝えるメッセージなのだ。