どうやって稼いでいたかというお話、こちらも興味深かったです。
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「一昔前までは、路上にはなんでもあったよ。いろんな仕事があった」
「へー。そういうのはどうやって見つけるんですか」
「師匠がいたんだよ」
「師匠!?」
・・・彼は鈴木さんに向かって、
「この生活は飽きないよ。飯が食えなくなることは絶対ないから心配することはないよ。道端にはなんでも落ちてるんだから。とりあえず色々歩いてみな」
と言ってくれたそうだ。彼の名前はウジイエさんという。・・・
・・・
「それで、どういうお金稼ぎを教えてもらったんですか」
「古本売りとテレホンカード売りだよ」
・・・
「ウジイエさんは、その二つの仕事のプロなんですか」
「いいや、それがあの人は一切働かないんだよ」
はい?どういうことですか。
「意味が分からないんですけど」
「ウジイエさんは、人柄がいいんで、なんでも集まってきちゃうんだよ」
ウジイエさん恐るべしである。その天性の人柄で、みんなが集まってくるようになり、ついでにいろんなものを持ってきてくれるらしい。そんなふうにみんなが集まる場所だったからこそいろんな情報が集まってきていた。さらにその情報を求め、周りからは人が集まる。・・・さらにその輪は路上生活者だけではなく、普通に働いている人たちにも広がっていったそうだ。
「あの人にはパトロンがいたんだよ」
「パトロン⁉」
「魚河岸の人だったっけなあ。えらく体格のいいアンちゃんだったけど、稼いではウジイエさんにお金を渡していたよ。・・・」
こういう人もいる、だけど、鈴木さんも全然不思議そうに見ていない。当然のような顔をしている。・・・
・・・
・・・次第にテレホンカードの需要はなくなっていく。・・・鈴木さんは次なる仕事を見つけなくてはならなくなった。
「でもそれが、すぐに次の仕事が見つかったのよ」
痛快である。本来、人間というのは困らないようにできているのかもしれない。
・・・
「そのころはまだ家電リサイクル法なんかなくて、道端には粗大ごみがゴロゴロ落ちていたのよ。で、それを拾ってきてた。・・・あとはねぇ、目の前で段ボール箱を捨てた人がいて、行ってみると……煙草だった。数えたら150箱ぐらいあった」
・・・
「本当になんでも落ちているんですね」
「その当時はすごかったよ。でも、家電リサイクル法のおかげでそれも減っていったんだよ」
・・・
古本、テレホンカード、電化製品と変遷した末、鈴木さんはアルミ缶拾いに移っていった。そして、そこに時代の追い風も吹く。アルミの値段は上昇を続け、・・・そして現在のような生活スタイルが出来上がっていったのである。