アルミ缶拾いにまつわる・・・

TOKYO0円ハウス0円生活 (河出文庫)

 アルミ缶拾いの計画や、人との関係など・・・興味深かったです。

 

P91

 ・・・鈴木さんは常に安定した月収を得ることができていると言っている。それはなぜなのだろう。そこには綿密に練られた計画と、鈴木さんの人間関係のうまさが隠されているようだ。・・・

「まずは1週間のスケジュールを知りたいんですが」

 ・・・

「月曜日が入谷・浅草地区で、火曜日が浅草2,3,4丁目、水曜日が竜泉……」

 ・・・

「休みがないじゃないですか」

「そうだよ。ゴミは毎日出るんだよ。行かなかったら悪いじゃないか」

 ・・・

 土曜日は、

「ホテル白ばら」

 ・・・

「だから土曜日はそこだけで7~8キロ。たまには10キロいく時もあるよ・・・はじめは先輩がそこでもらっていたのね。でもある日、なぜか彼はそのホテルからアルミ缶をもらうのをやめたわけ。・・・で、それをたまたま小耳に挟んで。・・・ホテルに行ったわけよ・・・掃除のオバちゃんにちゃんとあいさつしたよ・・・私はこれで生計を立てていますので、もしもよろしかったら、ここのアルミ缶を毎回下さい、って」

 それで、オバちゃんはどう返してくるのか?

「毎週出すから来なさい、だよ・・・ある日、社長にも会ったよ・・・面白い社長さんだった。それでここのホテルの空き缶はすべてもらえることになった」

 なんだか映画みたいになってきた。

「でも、その時に条件が出た」

「すんごく気になりますね。その条件」

「もしもこのホテルがつぶれたらオレの面倒を見てくれ、と言われたのよ」

「それ、よっぽど認められてますね」

「いやー、本当に感心してたよ。オレの生活を。そうなりたいと言ってたもんね」

 とにかく要所要所で話がうまいのだ。

 ・・・

 それにしても、鈴木さんはアルミ缶を拾い集めている時にいろんなものを見ている。特にお店はよくチェックしている。・・・どこのお店がはやっているか?その理由は?色々考察しながら彼は世の中を観察しているようだ。

 西浅草の「まんぷく」、かっぱ橋通りの「スナック虎」。この2軒の飲み屋が最近気になっている店だという。・・・鈴木さんの読みは的中し、「スナック虎」はかっぱ橋通りから上野に移転し、店の規模も大きくリニューアルされた。

「うまくいっているところは、うまくいっている。やっぱり一番重要なのは人柄なんだよね」

 ・・・

 こういう鈴木さんの視点には、彼が0円生活をする理由のようなものが見え隠れしているように思える。

 鈴木さんは「工夫して暮らす」ことがとても面白いからこの生活をしていると言っていた。そして、コンクリートの家には住みたくないとも言っていた。人がこういうふうに集まるのはここしかないとも言っていた。

 これらの言葉は、金銭的な価値を基準にした生活ではなく、人間的な生活を送るために0円生活をやっているというようにも取ることができる。都市というところは、その中間が存在しないところなのかもしれない。・・・