健康について、こんなお話もありました。西田さんというのは、雑誌「ゆほびか」の編集長の方です。
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西田 ばななさんの『Q健康って?』の本の中に、「自分は元気だけど、隣の人が体調を崩している。そのとき“私は健康だからいいや”って平然としていられる人は、本当に健康なのか?」という問いかけがありました。周囲の健康のために自分ができることを提供していくことは、真に「健康的」だと思いました。
ばなな 健康なものには、周りを健康にする力があると思います。
健康な考え方とか、健康な言葉とか、健康なあり方とか、結局、周りに対していちばんよい影響を与えるのは、そういうことですから。例えば、足裏マッサージに行って、リフレクロソジストの方が弱っている感じだと、どうしよう、申し訳ないなと思いますよね。
西田 ご自身が書いたり、発信される時は、ご自分の状態を意識されていますか?
ばなな 作品には、健康で楽しいことばかり書いているわけにはいきません。悲しいこととか苦しいこととかも書いていきます。
そういう意味では、健康で楽しいことを書こうとか、この状態で書こうとかということに対して、強い意識を持っているわけではありません。
けれども、ある種の豊かさはとても大切だと思っています。その豊かさには、悲しみも苦しみも含まれている。そうした豊かさが、安定した腸内細菌のような、よいバランスの状態にあって、みんな生きてるよ、ここは豊かな畑ですよって―。そういうものが常に背景に感じさせられる書き方でないと、何も与えられないなって思います。
亜美衣 すごいお話を聞いてしまいました。
ばなな 私はお医者さんのように、実際に人を治せる人間じゃないから、近くにインフルエンザの人がいたら「近寄らないでね」って思うけど(笑)。
でも、小説では、自分にやれることがある。自分が得意なことをやっているだけで、それぞれ、同じことをやっているんだなぁという感じはありますね。