お二人の人柄も発想も、すてきだなと思います。
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羽生 ・・・記憶力、計算力、瞬発力が強い十代から二十代の前半ごろまでは読みが中心です。年齢が上がって三十歳を過ぎてくると、経験値を積む中で直感や大局観といった感覚的なものを重視する傾向があります。
これは良い悪いではなくて、山登りで言えば北から登るか、南から登るかの違いです。残念ながら、両方を同時に伸ばすことはなかなかできなくて、片方が伸びると片方が衰える、そんな感覚があります。・・・
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大局観は年齢とともに精度が上がってきて、一目その場面を見て指し手が判断できるようになると楽ですね。でも地道な読みや、きめ細かな詰めがおろそかになってしまうと、最後の決断のところの精度が鈍くなってしまうことはありますね。
山中 面白いですね。生き方がそのまま戦い方に表れているような感じがします。
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羽生 ・・・持っている知識量は歳を取っている人のほうがたくさんあるんでしょうけれど、若い人は本能的に「これはだめ」とか「これは使えない」というものを何のためらいや先入観もなく、ばっさりと切り捨てることができます。そこから新しいアイデアを思いつけるのではないか。
将棋の世界は「いかに得るか」よりも「いかに捨てるか」「いかに忘れるか」のほうが大事になってきます。たとえば自分がすごく時間をかけて勉強したものを捨てることはなかなかできないんですよ。
でも変化の激しい時代ですから、十五年前くらいに研究していた型も、今はまったく何の役にも立ちません。それをむしろ、ためらいなくどんどん捨てていかないと、時代についていけなくなると感じています。そういう意味では、「思い入れを捨てる」ことが非常に大事なのかなと思いますね。
山中 それが意外と難しい(笑)