怒るよりアドバイスを

力を引き出す 「ゆとり世代」の伸ばし方 (講談社+α新書)

どのように説明すると通じるか、というお話です。

 

P142

原 学生に怒るときは、真剣に怒るけれど、最期は未来志向で締めるということは意識しています。つまり、最後は怒った選手のいい部分と、君はこういうところを改善したらもっと良い選手になるんだ、ということをきちんと選手に伝えるようにしている。そうしないと、その学生には、監督に怒られたという事実だけが残ってしまう可能性があるので、「怒られた」ではなく、「アドバイスされた」と思われるようにはしていますね。

原田 監督をしているうちに、このほうがいまどきの学生にはいいな、と思うようになってそうするようになっていったのでしょうか?

原 そうだと思いますね。極端な話、「やめてしまえ」と言ったら、本当にやめますからね、いまの学生は。

 ・・・

原田 うちの若者研でもこの前似たようなことがありました。企業との大事な仕事の場に遅刻してくる子がいたんで、思わず「もう来なくていい」と言ったら、本当に来なくなった。・・・けっこう唖然としました。

 ・・・

 いずれにせよ、やっぱり叱るだけじゃ通じない時代になってはいますね。

 ・・・

 学生を叱るときに、「こんなことをやったら『君にとって損』だよ。・・・」というような言い方をするようになっていきました。

原 「君にとって損」。まさにおっしゃる通り、この言葉が大切なんだと思います。

 ・・・

 ・・・君のことを思って、君が将来損しないように私は注意しているんだというようにしないと、彼らは動かないんでしょう。・・・

原田 ・・・一方で、将来への不安がすごくあるから、君の将来にとってこうすると得だよと言われたら、ああそうか、それなら変えてみようかと素直に従うようになっているということかもしれないですね。

原 もちろん私自身の変化もありますね。

 四〇代の前半くらいまではまだ突っ張っていて、・・・でもあるとき、ああ、これじゃいけないなと思ったんですね。いくら怒鳴っても、こっちがリモコンで操っているだけで、電波の届かないところにいったら、あいつら動いてないなあと。

 ・・・彼らのほうが知識を持っているし、われわれの世代よりもよっぽど勉強している部分も多いから、アイデアもたくさん持っている。そうしたところは彼らに学ぼうと思ったんですね。

 そして実際に、こちらから学生たちから学ぶ姿勢を見せると、彼らは本当に真剣に教えてくれます。

 一方で、判断の部分とか、人とどのように付き合っていくのかといった生き方の部分は、経験を踏んだ年長のわれわれのほうが分があるので、それはきちんと伝えていこう。そうして対等な関係をつくっていこうとあるとき思って、徐々に変わっていった。