無意識に任せる

セラピスト (新潮文庫) [ 最相 葉月 ]

箱庭に関して、もう少し書き留めておきます。
〝必ずしも「意識」を通過せずとも、心理療法は成立しうる〝というのは、ヘミシンクでリリース&リチャージ(たとえば「心と体の若返り」のトラック4に入ってます https://www.aqu-aca-shop.com/SHOP/PA001CJ.html)が効果を上げていることからも、よくわかります。

P152
 ・・・なぜそもそも河合はユング心理学を日本に持ち帰ったとき、ユング心理学を真正面から紹介するのではなく、まずは箱庭療法から始めたのか、箱庭療法が日本人に向いていると考えたのはなぜかと。・・・河合はこう答えた。
「日本人いうのは、言語化するのが苦手な民族なんや。それが得意な人が治療者としては精神分析を選ぶ。でもほとんどの人が得意じゃない。ところが、箱庭というのは一回見ただけで、クライエントの力量も治療者の力量もわかる。見ただけでわかるという直感力が優れているのは日本人全体の通性なんや。だからこれは使えると思った」
 これに関連して、河合は次のようにも語っている。
「日本では自と他、物と心の区別があいまい。心の問題は人間関係全体の中に溶け込んでいると認識され『心』だけを取り上げることはなかった」・・・
 日本人は西洋のように物と心を区別しなかったから、心だけを採り上げて言葉にすることがなかった。そのため、患者だけじゃなく治療者も、自分の心の内を言葉にするのが苦手である。だが、盆栽や盆景を好む日本人ならば、イメージで表現することはできるのではないか。箱庭ならば抵抗なく接することができ、心の内を託すことができるのではないか。河合はそう考え、ひたすら事例を積み重ねた。
 思っていることを言葉にするのが苦手であるという日本人の特性は、現代の国際化社会では否定的なこととみなされるかもしれない。「あなたの意見はと言われると、まず周囲のことを気にする日本人の傾向は、欧米人に言わせると『自我がない』とまで極論したくなるほど」(『日本人とアイデンティティ』)だと河合も書いている。
 ・・・

P159
 山中は、箱庭療法について、こうも書いている。
箱庭療法」は、治療者が見守る中で、クライエントがただ黙々と置いていくだけで、ただそれだけで、ほかの幾多の方法などより、はるかに立派な成果を上げる。この治療法が教えたことは、実に大きい。すなわり、「治療者の臨在」の意味の大きさや、「敢えて言語化せずとも、癒されうる」こと、つまり、必ずしも「意識」を通過せずとも、心理療法は成立しうること、言語や意識の代わりに、「イメージ」が治療にあずかっていることなどを知らしめたのである。・・・