すてきな交換

人類最大の秘密の扉を開く ソウル・オブ・マネー 世界をまるっきり変えてしまう<<お金とあなたとの関係>

「ソウル・オブ・マネー」という、お金とは何か?をめぐる本を読みました。
そのうちきっと、こんな交換が増えてくるんじゃないかなと思います。

P192
 それは、とても疲れた金曜の夜のことでした。私はサンフランシスコから、自宅のあるサウサリートへと車を走らせていました。ゴールデンゲートブリッジの数ブロック手前まで来た時点で私はブレーキが故障していることに気づき、車をガソリンスタンドに停めました。その店のスタッフはブレーキを修理することはできなかったものの、通りの向こうにある車の修理店を教えてくれました。
 私はその短い道のりをブレーキ無しでゆっくりと車を進めましたが、店の正面に近づくにつれ、自分にはまったく運が無いことに気づきました。現在の時刻はすでに夜の7時過ぎで、お店のドアは閉まり電気も消えていたのです。ただ、ドアの小窓を通して、ほのかな光が灯っているのを見た私はドアに近づき、思いやりある修理工がまだそこにいることを願って、中をのぞいてみました。
 私の目に映ったのは修理工ではなく、30人ほどの人たちがパーティーをしている光景でした。・・・コンクリートの工場の中央には、黒くつやつやに輝いたグランドピアノが置かれていました。
 私は、勇気を出して中に入り、片手にシャンパングラスを持った、リコというこの修理店のオーナーを見つけました。私は必死に事情を説明し、お金がいくらかかってもいいので車を修理してくれる人がいないかと尋ねました。
 リコはそんな私の姿を見て、笑いながら答えました。・・・「今日はピアノ奏者が来なかったんで、ピアノを弾いてくれるんだったら、修理してあげてもいいですよ」・・・
 私は工場の中央に置かれたグランドピアノまで歩いていくと、そのピアノを弾きはじめました。私は偶然にもピアノが弾けるのです。そして、1時間ほど演奏しました。笑ったり、歌ったり、ダンスしたりしている人たちと、一緒にパーティーを楽しみました。
 その間、ある修理工が楽しそうにブレーキを修理してくれました。ピアノを弾き終えると、そこにいた皆が出口まで見送ってくれ、ブレーキ修理の代金を支払おうとする私に対して請求もせず、今日ここで生まれた新たな友情に乾杯してくれました。
 こうして私は、家まで安全に車を運転して帰ることができました。そのときにはすっかり疲労がなくなり、むしろ、エネルギッシュで晴々とした気分だったことを覚えています。