幻聴じゃない

アメリカ超能力研究の真実――国家機密プログラムの全貌 (ヒストリカル・スタディーズ)

超能力とは関係ありませんが、こんなことあるんだ、とびっくりしたところです。

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 ・・・プハーリッチは正気の人間の可聴域〔人に聞こえる周波数の範囲〕異常と呼ばれる、頭のなかで「声が聞こえる」と主張するが、精神病の検査では異常がない人々に興味をそそられていた。・・・
 プハーリッチは、ベルヴュー病院で幻聴の症状によって初めて精神病棟に収容された患者を見つけてほしいと頼んだ。その結果、突然可聴域に異常が起きたという以外、精神病の既往歴がまったくない機械製作工が見つかった。声が聴こえはじめる前、機械製作工に精神病の症状はいっさいなかった。一九五〇年代の医師の多くは精神障碍と判断しただろうが、プハーリッチと彼の財団はちがった。この男は電波に乗って流れる声を聴いているのかもしれない、と考えたのだ。要は、ほかの人間には聞こえない特定の無線周波数を、どういうわけか「受信している」ということだ。「われわれは、診断のカギがこの男の仕事にあることを発見した」と、プハーリッチは書いている。
 男が働く機械工場の日常業務は「金属ケーシングをカーボランダム〔炭化ケイ素〕・ホイールで一度に数時間研磨する」ことだった。プハーリッチの研究チームは、男の歯の検診をおこなった。「すると、金属の詰め物が、半導体であるカーボランダムの粉塵(炭化ケイ素)」で覆われていることがわかった。「カーボランダムが、一九二〇年代の古い鉱石ラジオ受信機〔鉱石検波器により検波をおこなう無電源のラジオ受信機〕のクリスタル整流器〔特殊な半導体〕のように作用していたのだ」。被験者をファラデー・ケージに入れると、すべての電気信号と無線信号が取り除かれた。「すると、声がやんだ」ことが確認された。「男の歯を覆う半導体の粉塵を除去すると、"精神医学上の"問題はなくなった」。男は精神病ではなかったのだ。「もっと正確に言えば、ニューヨークのラジオ放送局WORに精密に同調して(声が聴こえて)いたことがわかった」。