ケレケレ

世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論

ケレケレという習慣についてのお話です。この本ではフィジー人のセリフがなぜかすべて関西弁なのですが、標準語よりなんだかしっくりきます(^_^;)

P77
 フィジーには「ケレケレ」という言葉があります。
 意味は「お願い」「頂戴」「貸して」を融合させたというところです。
 ・・・
 ドラえもんに出てくるジャイアンは「俺の物は俺の物、お前の物も俺の物」という哲学を持っていますね。
 であるならば、フィジー人の哲学は「俺の物はみんなの物、お前の物もみんなの物」。やさしいジャイアンです。・・・
 私がケレケレの洗礼を受けたのは、フィジーに来てすぐのことです。
 移住して最初の数カ月間、私はフィジー人の家にホームステイさせてもらっていました。そしてある日の夕方、干していたTシャツを取りこもうと物干し場に行くと、私のTシャツがありません。
 行方を探して夕食の匂いのするキッチンに入った瞬間、ホストマザーの息子が私のTシャツを勝手に着て歩いている姿が目に飛びこんできました。「それ、僕のTシャツだよね」。
 即座に突っ込むと、息子は満面の笑顔で返してきました。
「そうやねん。ピッタリやろ(ニコッ)」。
 ・・・
 会って数日の人の服を勝手に着る。私はこの文化に馴染めるのだろうか?そもそも馴染んでいいのか?と不安になりました。

P83
 ケレケレは英語で「giving without expectation(期待なく与えること)」と訳されます。つまり、ケレケレには与える側に「見返りを期待する」という感覚がないのです。
 日本人でも、家族や親友など近しい人たちには見返りを期待せず与えることはありますよね。しかしフィジー人の場合、近かろうが遠かろうが、だれかれなく自然にできてしまいます。ですから、与えられる側も恐縮する必要はまったくありません。だからこそ、私のTシャツも無断で、悪気なく、拝借されてしまうのでしょう。