地球サイズの地図

国境のない生き方: 私をつくった本と旅 (小学館新書)

きのうの記事に引用したお母さんの話もすごい…と思いましたが、この話もすごかった。
この生命力にあやかりたいです(笑)

P249
 あれはいつだったか、友達を連れてイタリアから帰国した時、うちの母が、北海道の千歳から成田空港まで車で迎えにきたことがありました。
「わかった。じゃ、行くわ」
 電話した時は、確かにふたつ返事でそう言っていたけれど、まさか千歳からタウンエースをぶっとばしてくるとは思わなかった。しかもオソロシイことに、私たちは、そのまま日本縦断の旅に出たのです。
 成田空港で私たちをピックアップしたら、そのまま箱根へ。富士山の五合目まで登って、そこから京都、大阪、岡山、四国、親戚がいる島原まで行ったら、今度は萩、津和野などなど・・・・・・。
 いまだにあの旅は語り草です。
 うちの母も、たぶん、持っている地図のサイズが「地球」なんだと思います。
 日本縦断なんて、だからちっちゃい、ちっちゃい。「別に車で行けるじゃん」っていうね。
 基本にしてるサイズが違うから「わかった。じゃ、行くわ」、ふたつ返事でタウンエースをぶっとばしてくる。
 ・・・
 ・・・みんな、持っている地図のサイズを変えてみたらいいと思うんです。基本にする尺度を変える。
 自分が暮らしている町でもなく、国でもなく、自分が生きているこの地球、この地球で生きているありとあらゆる生き物、そういうすべてをふくんだ宇宙、そこまで地図を広げていったら、ものの考え方や見え方も変わるんじゃないか。
 単純に地球があって、太陽があって、この環境の中で生きていける生命体として、私たちは命を授かったのだから、まず「生きてりゃいいんだよ」。これが基本。
 生きてていいから、生まれてきたんですよ。
 それなのに、なぜ生きていくのかとか、仕事がどうとか、人間関係がどうだとか、私にいわせれば、そんなものは、あとからなすりつけたハナクソみたいなものです。
 もっと、ただの生き物みたいに、生きることそのものに夢中になったらいい。