自立とは…

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)
またこの本に戻りまして、ここはとても納得、共感でした。

P135
 脳性まひの小児科医である熊谷晋一郎さんは、障害者の自立について興味深い定義をしています。すなわち、「自立とは依存先を増やすことである」と。自立というと、依存を少なくしていきゼロにすることだと思いがちです。しかし熊谷さんはそうではないといいます。周りの人から切り離されることではなく、さまざまな依存可能性をうまく使いこなすことこそが、障害者の自立である、と。
 私が見えない人に感じる「乗る」ことのうまさは、もしかすると、こうした障害者ならではの生き方と関係しているのかもしれません。
 いや、熊谷さんの言うように、健常者だって本当はいろいろなものに依存して生きています。自分が口にしている食べ物を育てたひとやそれを運んだ人、いま歩いている道を整備した人など、数えればきりがないほど多くの人に、私たちの生活は依存しています。健常者=自立している人、と思いがちですが、その実態は「自立しているフリ」をしているだけなのです。そう考えると、周囲のサポートをうまく生かしながら生きている障害者とは、むしろ「依存のスペシャリスト」であるといえます。
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 ・・・視覚障害とは、体同士を軽く触れ合わせる、まさに触覚的な関わり方をする機会が多い障害なのです。見える人に接触という形で依存する機会が多いからこそ、見えない人は他者の動きや物の運動と対話し、それを「乗りこなす」術に長けているのかもしれません。
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 さて、「乗りこなす」からには、単に相手の動きに従っていてはいけません。・・・対話的であるためには、柔軟に応じつつも主導権を手放さないことが肝要です。・・・