成長のチャンス

夢をかなえる。 思いを実現させるための64のアプローチ

できればきつい状況は避けたいものですが、澤さんのエピソードを読んで、やっぱり大変な経験ほど、その後に生きるな〜…と、自分のことも振り返りつつ、思いました。
あの経験に比べたら、今はなんてことない、と思えるだけでも違いますよね(苦笑)

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「失敗は成功のもと」はいいけれど、八方ふさがりで無力感を味わった場合は、完全にお手上げ状態になっちゃいますよね。
「どこをどうしたら、『意味のある負け』にできるのか、ちっとも分からない」
 そんなふうにヘコんだ経験もあります。でも、そういう状況でさえも、まわりまわって何かしらのプラス材料にすることはできます。
 そう言えるエピソードが、私にはたくさんあります。その例を1つ、挙げてみようと思います。
 それは、20歳でアメリカに行ったことです。日本の選手として初めて女子サッカー大国のプロリーグに挑戦したので、本当に分からないことだらけでした。しかも私の場合は、初めての一人暮らしでもありました。
 細かい話ですが、何曜日にどのゴミを出すのかも分からない。必要なものを買いに行こうにも、どこに行けばいいのか分からない。「分からない」ということをどう説明したらいいのか、その英語も分からない。渡米前に大きく膨らんでいた希望なんて、すぐにしぼんでしまいました。本当に何もかもがつまづきの連続だったんです。
 また、いまから10年以上も前で、メールも普及していなかった時代ですから、日本の家族や友達に連絡をしようにも、手紙を書くしかありませんでした。書いてから日本に届くまで1週間、それから返事が届くまで1週間。手紙が往復するのに最低2週間はかかりました。返事を待っている間にも、伝えたいことがどんどんたまってきます。距離が気持ちに追いつかないという不安、つらさ、寂しさも、経験してみないと分からないものでした。
 当時は毎晩泣いて、サッカーどころじゃない「敗戦気分」で過ごしていました。でも、そんな経験が私を強くしたと思います。
 何ができるようになった、という話ではありません。
「わけの分からない最悪な状況も、どうにか乗り越えられる」
「うまくいかなくても、次第に慣れてくれば分かるようになる」
「人間、どうにか対応できちゃうものなんだ」
 そんなふうに、あらゆることに余裕を持てるようになったんです。
 これは後々の人生に大きな影響を与えてくれていると思います。しかも、そういう大事な心構えを、人から聞いて教わったのではなく、自分で体験して知ることができたことも、とても大きな自信になりました。
 ひょっとしたら、「もうダメ」って思った時ほど、成長するチャンスが目の前にあるのかもしれません。