先日読んだ佐治晴夫さんの本がとてもよかったので、この「宇宙のカケラ」も読みました。
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最新の宇宙研究の成果からいえば、私たちの宇宙は、今から百三十八億年の遠い昔、かぎりなく熱く、まばゆいひとつぶの光から生まれたということが、検証可能な科学的事実としてわかっています。・・・つまり、この宇宙に存在するすべてのものは、根源において同一であり、したがって独立存在はありえず、すべては、互いに浸透し合う相互依存の存在だということになります。
私たちは、自分というものが自らの意思で生きているかのように思っていますが、自分では心拍のコントロールはできず、日常生活の中で、呼吸をしていることすら意識することなく過ごしています。・・・すべて体まかせなのです。
私たちの体は、およそ数十兆個の細胞でできているとされています。しかし、その一パーセント、すなわち、数千億個は、一晩で入れ替わるともいわれています。物質としての自分の体は、時々刻々と変化しているのに、なぜ、自分は自分であり続けられるのでしょうか。
それはあたかも、水は水自身からできているのではなく、水ではない水素と酸素からできているという事実を思い起こさせます。「私」とは「私以外」のものからできているようです。そこで、もし、それが真実であるならば、その事実から、どのように生きるべきなのかということの答えが、見えてくるかもしれません。
そんな思いを抱くとき、私はこの世界の様相が、「般若心経」の世界観そのものであると感じます。・・・これは、宇宙研究にたずさわる者の一人としての確かな実感なのです。
・・・
人間と宇宙には深いつながりがあります。宇宙を知ることは、自分について知る旅―長い研究人生を通して、私はそう感じています。・・・
・・・
人間の体は星のカケラ、もっと詳しくいうと数十兆個の細胞が集まってできています。つまりあなたは、「あなた」からではなく、あなた以外のものからつくられている。・・・あなたはあなたでないものからできているのだから、いくら自分の中に「自分」を探しても、見つからないというわけです。では、あなたはどこに存在するのでしょう。
・・・
・・・人はひとりで自己を確立できない。「あなたではないもの」があってはじめて、「あなた」という存在が確立されるのです。・・・
P135
―すべては〝入れ子構造〟の中に―
蜂と神さま
蜂はお花のなかに、
お花はお庭のなかに、
お庭は土塀のなかに、
土塀は町のなかに、
町は日本の中に、
日本は世界の中に、
世界は神さまの中に。
さうして、さうして、神さまは、
小ちやな蜂のなかに。
(金子みすゞ)