ありがたみがあった方が・・・

脳はすこぶる快楽主義 パテカトルの万脳薬

 脳のクセって面白いです(;^ω^)

 そして飼いネコの習性には、へぇ~と思いました。

 

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 たとえば、こんな実験例があります。ある団体に所属するときに、希望すれば誰でも入会できる場合と、厳しい試練を経て仲間入りできる場合を設けます。すると、たとえ根拠のない儀式であっても何らかの入団基準があったほうが、入会後に、その団体への所属感や愛着が強くなります。

 脳は労せずに手に入れたものよりも、何らかの対価を払って入手したものを好みます。・・・

 研究室で飼育しているネズミたちを思い出しました。

 私は仕事柄、連日、ネズミの行動を観察しています。通常、餌は皿に入れられていて、好きなときに食べられる状態にしてあります。もちろんネズミは十分に賢いので、レバーを押すと餌が出てくる仕掛けに変えても、すぐに学習し、上手にレバーを押して、餌を食べるようになります。

 そこで、こんな実験をしてみましょう。2種の餌を、同時に与えてみるのです。一つは皿に入った餌、もう一つはレバーを押して出る餌。どちらの餌も同じものです。さて、ネズミはどちらの餌を選ぶでしょうか。

 試せばすぐにわかります。レバーを押して餌を取る率が高いのです。苦労せずに得られる皿の餌よりも、労働をして得る餌のほうが、価値が高いというわけです。

 実は、これはイヌやサルはもちろん、トリやサカナに至るまで、動物界にほぼ共通してみられる現象で、「コントラフリーローディング効果」と呼ばれます。ヒトも例外ではありません。先の実験を就学前の幼児に対して行うと、ほぼ100%の確率でレバーを押すことがわかります。成長とともにレバーを押す確率は減っていき、大学生になると五分五分の選択率となりますが、やはり、完全に利益だけを追求することはありません。

 こうした脳の本質的なクセを知ると、労働の価値について考えさせられます。悠々自適で贅沢三昧の生活は、誰もが憧れます。しかし仮にそんな夢のような生活が手に入ったとして、本当に幸せでしょうか。

 ちなみに、これまで調べられたなかで、コントラフリーローディング効果が生じない動物が、1種だけ知られています。飼いネコです。ネコは徹底的な現実主義です。レバー押しに精を出すことはありません。もしかしたら、・・・「ありがたみ」とは無縁な、独特な価値観を持っているのかもしれません。