至福の時間空間

春夏秋冬いやはや隊が行く

 北の島も楽しそう、美味しそう♪

 

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 蘭島の海岸でキャンプすることになった。ここは北海道で最初の遊泳海岸の地である、と海岸沿いの看板に書かれている。まあ北海道は寒いから、その昔はなかなか海で泳ぐということをしなかったのだろうねえ、などと話しつつ、各自個人用のテントを張る。・・・

 季節はずれの海岸にはキャンプのヒトは我々しかいない。・・・

 雲の動きがあやしいのでタープを張って、その下に食事用のテーブルや椅子を置いた。今夜の料理長は三島である。三島はむかしから辛味が好きで、とにかくいつも辛くて辛くて死んでしまいそうな〝死に辛味〟を追究している。その日のメニューは新岡魚店でみつくろってもらった新鮮なヒラメとイクラ、それに、ホッケの開き。ヒラメは贅沢に刺身である。ホッケの開きはアブラが多く、ビールのつまみに申し分ない。

 夕やけが美しかった。余市湾をまたがって山の向こうに赤ダイダイ系のグラデーションが燃えるように天空の半分にひろがっている。いやはや美しい。美しい夕映えの中でホッケをかじりビールをのむ。いやはやうまい。空も美しいが酒もサカナもうまい。うまいが美しい。どうも忙しい。

 海からの風が焚火にほどよい燃焼風をくってくる。煙が地表低くたなびいていき、その中で火がとびはねている。映画のカメラがあったら、静かにじっくり回していたい風景だ。

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 ゴハンをたいて、とりたてのごっそりイクラをごっそりかける「とにかくごっそりのイクラ丼」が出てきた。酒のあとにはあまりにヘヴィだが、しかしそれにしてもあつあつゴハンにごっそりイクラである。黙って見ている、という訳にはいかないではないか、というトーゼンの状況判断になる。いつしか全員が夜中のイクラ丼わしわし食いの状態になった。

 やがてポツポツと静かに雨が降ってきた。テントにもぐって雨の音を聞きながら、しずかに本を読む、という「もうひとつの至福の時間空間」に突入していく頃だ。

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 シュウシュウと力強い音をたてて燃えるブタンガスランプを横において、ヘッドランプの光の中に文庫本をひろげ、小さく満足のひと息―なのだ。