コロナで出掛けられなかったので、疑似体験的に読みました。
椎名誠さんが仲間たちと海や山や川で遊んだ記録、読んでるだけでその場にいるような気がして楽しかったです。
こちらは沖縄のオーハ島でのキャンプ、周囲3キロの小さな島だそうです。
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島の朝は早い。ぼくもキャンプの時はやたら早くおきる。まだ暗いうちだ。暗いうちに顔を洗い、すこし体を動かして、体をすっきりさせて、夜があけてくるのをぼんやり待っている、というのが好きだ。
リンさんも早おきだ。コーヒーをわかしてくれる。ボールの上にワリバシを置いてザルの上に濾過紙を置き、その上にひいたコーヒー。上から熱湯を注ぐ。シェラカップに入れて海や空などがさらに明るくひらけてくる空の周辺を眺める。
今回のキャンプのテーマはとくに「何もしないこと」である。だから朝めしができても寝ていたい人は寝ていてもいいのだが、みんなおきてくる。チャンプルーをつくるフライパンの音とその匂いで目がさめるのだろう。
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午後は渡船がやってきたので、サンゴの海へ潜った。サザエをとる。船長がオニダルマオコゼを突いた。・・・
昼めしはタンタンメンであった。あつい中であつくてからいタンタンメンをぐわっと食べて汗をだらだらかき、そのまま海の中に飛びこんでいくのはひとつの人生のシアワセである。
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オニダルマオコゼの刺身。同じくそのカラアゲ、サザエのキモスペシャルで夕方のビールになった。この一瞬がフルエルほどうれしい。船長に氷の補充をしてもらったのでどんどんビールをひやす。
沖縄のトーフはにがりがきいてうまい。かつおぶしをかけて醤油をたらしてこれもいい肴になる。島らっきょうが泡盛にロコツに合う。申しわけない申しわけないといいつつ、風の中でじわじわ酔っていく。
大量に獲れたサザエはツボ焼きにすると大変なので船長におしえてもらってそっくりゆでてしまう。そうすると身ばなれがよくてキモまでくるりと引き抜けてしまう。そうかこういうやり方でいいんだな、とリンさんがしきりに感心していた。
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背後のモクマオウの繁る林ではアカショウビンが鳴き、奥武島とオーハ島をへだてる幅四百メートルの川のような海底には小アジサシが朝の食事をしている。
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我々も朝めしとなる。アバサーのみそ汁にヘチマのみそ煮、カジキのづけであついめし。
この日も基本的に何もしないことにした。各自好きなように海に入って泳ぎ、潜り、午前中のヒルネをし、本を読む。風がずっと吹いているのが嬉しい。
昼食はひやしうどんであった。リンさんは昼メシはすべてメン類特集と考えているようだ。熱い陽ざしの中で、つめたいうどんがつるつるといくらでも入ってしまうからこの作戦は大成功なのである。沖縄の食事の必需品コーレーグースがぐっとしまりのある辛さをこしらえる。
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・・・ようやく夕方。比嘉さんのところへ行って体を洗わせてもらい、ついでに水をもらってくる。
こういう島には漂着物のゴミの中に必ずペットボトルがごろごろしている。ビールはシエラカップではなく、やっぱりすきとおった容器で、あのビールのコハク色と泡をしっかり眺めながらのみたいので、この頃ぼくはそういうペットボトルの下部分をナイフで切って簡易ビールジョッキふうのものをつくりそれでそれでぐびぐびのむことにしている。そのほうが数倍うまい(よーな気がする)。
まずは本日の収穫物、もずく酢が出てきた。もずくうどんのようでうまいのだ。サバニの漁師からもらったグルクンをじっくり網でやく。サザエの刺身。夕陽にビールをすかしてのむ。申しわけないくらい本日もいい気分ですぎていく。風がいくらかつめたくなり、海の鳥が帰っていく、星が見えはじめる頃、焚火の火をつけた。