質問しても大丈夫

2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義 (星海社 e-SHINSHO)

 クラスを動かすのがすごくうまい、授業も大人気になるわけだ、と思うお話でした。

 

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 今日は講義中わりと早く手が挙がりましたけど、だいたい僕の授業とか講義って、最初のうちはぜんぜん質問が出ないんですよ。

 それで質問を促すために、必ず行うクイズがありまして。

「横軸に偏差値のような『賢さ度合い』をとって、縦軸に『質問の数』をとるグラフがあるとしたら、それはどういう線を描くでしょう?」っていうクイズなんですけど。

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 どうです、そこの紫の方。

生徒10「ええと、山が二つだと思います」

 山が二つ?こういう感じで、正規分布みたいな形?

 なるほどなるほど。

 答えを言うと、基本的には正比例のグラフです。話が十分に理解できていない人は、質問もしようがないので、手が挙がりません。で、賢さが上がっていくごとに理解度も上がるので、だんだん質問の数は増えていきます。

 なので、基本的に右肩上がりの正比例なんです。

 ところが、賢さがあるラインを超えると、突然質問の数が減り始めます。そこからは右肩下がりの正比例になるんですね。

 なぜか?

 ある程度レベルが高い大学とかに行くと、「ここで変な質問をしたらバカだと思われてしまうんじゃないか」とか、「どうせ質問するんだったらかっこいい質問をしてみんなをギャフンと言わせよう」とか、そういう牽制がお互い始まるからです。

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 なのでこの会場も、たぶんみなさん、手を挙げにくいんです。でもじつは手を挙げても大丈夫なんですね。理由は二つあります。

 理由その一、まずここで手を挙げて、ヘボい質問をしたとしますよね。「それ、さっき言ったじゃん」みたいな。「おまえ、理解度低いな」みたいな感じでみんな顔をしかめます。

 でも多くの場合、そういう質問の内容って、他の人も本当のところはわかってなかったことが多いんですよ。なので、「さっき言ったじゃん」みたいな顔をしていても、心の中では「じつは俺もよくわかってなかった。グッジョブ!」と思ってます(会場笑)。

 だから質問してもぜんぜん大丈夫なんですよ。それが理由その一。

 理由その二は、僕、この手の討論系の授業をすごくたくさんやっているので、得意なんですね。なので、テクニックがあります。

 どんなにヘボい質問が出ても、何事もなかったようにその質問を善意に解釈して、「グッド・クエスチョンですね」みたいな感じにして答える。そうするとまわりの人たちは、「あ、この質問、一見ショボいと思ったけど、じつは鋭かったんだ」みたいな感じになって(会場笑)、「そういう視点はぜんぜん持ってなかった」みたいな感じになって、何事もなかったように物事が過ぎていって、質問した人も「いや、そういう意味じゃなかったんだけど、ま、いっか」みたいな感じですべて円満になりますので、じつは質問するリスクはゼロなんです(会場爆笑)。