つながり

TOKYO0円ハウス0円生活 (河出文庫)

 このあたりのお話も、素晴らしいなぁと思いました。2人というのは、鈴木さんはミーコさんという方と一緒に暮らしているからです。

 

P140

「2人とも服とかどうしているんですか」

 鈴木さんのシャツもいつもピシッとしている。漂白したみたいに真っ白だ。

「ある人が持ってきてくれるんだよ。新品を」

「はい?」

 また謎の発言である。誰なんだ、そのある人って……。

「3年前にうちの家の前で散歩していた男性が転んじゃったのよ。水たまりに足を滑らせて。大丈夫かなと思って外に出てみると、びちょぬれなわけよ・・・だから家からタオル持ってきて、綺麗にふいてあげたのさ・・・そしたらさ、ある日その人がまた訪ねてきたんだよ・・・この間は本当にありがとうございましたって、丁寧にあいさつに来てくれて。あの時のことは絶対に忘れません、感動しましたって言われてさ……。その人、洋服屋の社長さんだったんだよ。それで新品の長そで、半そでのシャツやらパンツやら、ミーコの服や下着なんかも持ってきてくれたんだよ」

「鈴木さん、もうホントにすごいですね」

「しかも、1回だけじゃなくて・・・それから毎年2回持ってきてくれるようになったんだよ。夏物と冬物ね」

 鈴木さんのコミュニケーション能力には計り知れないものがある。1回きりではないのだ。常に関係性が持続していくのである。しかも、損得を気にしてやっているのでは一切ない。それよりも人間同士の結びつきの方に力を入れている。

「そうやった方が、なんでもうまくいくんだよ」

 鈴木さんはそう言った。・・・与え続けること。

「世の中には素晴らしい人たちがたくさんいるのよ」

 鈴木さんの言葉には真実味がある。

「人は見かけではないことを、分かってくれる人がいるから、幸せだよ」

 その実感が彼の生活を満ち足りたものにしている。

 僕はそういう鈴木さんの態度や姿勢は、家を自力で作っていることや、自分で考えて工夫して生活していることなどと切り離しては考えられないと思う。すべてが一体で自分の考えで行っているからこその余裕であり、豊かさだと思う。・・・毎回毎回、いろんな話を聞くたびに僕は立ち止まって考えてしまう。

 

 ところで1週間ほど、ガイドラインhttps://www.aqu-aca.com/seminar/guidelines/のお手伝いをする関係で、ブログをお休みします。

 いつも見てくださって、ありがとうございます(*^-^*)