ブータン

未来国家ブータン (集英社文庫)

高野秀行さんの本、なにか吸引力があって読んでしまいます(笑)
有用な生物資源を探索するという名目で、雪男探しにブータンに出かけたお話ですが、それはさておき普通のブータンの暮らしが伝わってきて興味深かったです。

ここは、普通の会話で「来世の準備」っていいなーと思ったところです。

P33
 シンゲイさんの家は町の中心部から少し離れた小高い丘の中腹にあった。
 奥さんが病院に勤めており、その病院の職員寮みたいなものらしい。家の間取りは2LDK、居間は洋風で、テーブルの周りには長椅子が置かれている。シンゲイさんのデスクにはパソコンが設置され、あちこちにプラスチック製の子供用玩具が転がっている。一般的な日本の家庭とそっくりだ。
 シンゲイさんはこの日もにっこにこの恵比須顔である。どうやら、この人はいつ何時でも、こうらしい。
「父は今、外に行ってますが、すぐに戻ってきます」と言う。
「お父さんは今何かしてらっしゃるんですか?」と訊くと、恵比須顔のままシンゲイさんは「来世の準備です」と答えた。
「お寺参りをしたり、散歩をしたり、孫の世話をしたりしてます」
 要は引退して悠々自適の老後を送っているわけだ。それを"来世の準備"と言うのが敬虔な仏教徒ブータン人らしい。