確かなものとは・・・?

EARTH GYPSY(あーす・じぷしー)

この本の終わりの方は、ここに書いてしまうとこれから読む方の楽しみが減ってしまうかなと思って躊躇しましたが、この部分だけなら大丈夫かなと。
私もいつも忘れずにいたい感覚だったので、書きとめておきます。

P235
今まで会った人が全て、「自分」なんだと気付いた。
なぜなら、それは、すべて「私」を通して見た他人でしかなかった。

すべては「私」という、この2つの目から視覚として、そしてこの耳を通して、時には匂いや、何か雰囲気のようなものを感じて、「私」がその時「私」の五感で感じたままの、「他人」が記憶されていた。

結局は「私」を通さず、世界は何一つ触れることができなかった。
だから、「私」は一生、本当の意味で他人のことを「分かる」ことは不可能なのだ。あんなに確かななっちゃんでさえ、「私」を通してではないと、感じることなどできないのだ。

私は25年間、一度足りとも「他人」のことを分かったことはなかったのだ。
私は「私」を通しての「他人」しか見たことはなかった。

私は「他人」を通して、「私」を見ていただけだった。
私はいつも「私」というものを介してでしか、世界を感じることはできなかったのだ。
それは、この人生でただの一度も、例外もなく、そうだった。

じゃあ、一体確かなものとはなんなんだろう。