私の夫はマサイ戦士

私の夫はマサイ戦士 (新潮文庫)

めずらしいエピソードばかりで、次は何が?とぐんぐん読んじゃう本でした。

たとえば結婚をめぐるお話で印象的だったところは・・・

P127
「まだ会って間もないのに、どうして結婚を決めたの?」
「血だ。キチュワ・テンボで話をした時、あなたはナイロビに来たら電話してくれって言ったけど、そんな先まで待てなかった。気がついたら電話をかけにキチュワ・テンボに向かっていたんだ。血がそうさせた。神が計画したんだ」
彼はまっすぐ前を見たまま、静かにそう答えてくれました。
「文化の違う日本人と結婚することに不安はないの?」
「ない。確信がある」
「第一夫人は私と結婚することに何と言っているの?」
「賛成してくれたよ」
 食事の時には「すぐに結論は出せない」と答えた私ですが、実は既に心は決まっていました。自然な流れにあえて逆らう必要はない―と。

そしてまたびっくりだったのが、この方のお母さんの反応です。

P150
「・・・実はまた結婚することにしたんよ。で、誰とすると思う?驚くよ」
「あんたのことだし、マサイとでも結婚するんかね」
 あてずっぽうながらも言い当てられたことに、私の方がびっくりしてしまいました。そもそも母がマサイのことを知っているとは思ってもいませんでした。
「ようマサイのこと知っとったねぇ」
「そりゃあ、知っとるよ、マサイくらい」
「でも、なんで分かったん?」
「もう黒い人には慣れとるけね。驚くほどの人って言ったらマサイくらいかなと思ってさ」
 これまでの経緯を話すと、母は感心しながら熱心に聞いてくれました。
「へぇー、そりゃ凄いねぇ。面白そうやねぇ」
 その反応があまりにも良かったので、あえて母には言うつもりでもなかった一夫多妻制についても話すことにしました。
 私にとって第二夫人になることはそれほど大きなことではないのですが、日本の人が聞いたら到底理解できないだろうと気を回し、心配させるのも悪いので、黙っておこうと思っていたのです。
「それでさ、その人には第一夫人がいて、私は第二夫人になるんよ」
 その後、一夫多妻制の必要性や素晴らしさを説明すると、
「ほー。そりゃそうやろうね。環境も文化も違うわけやから、一夫多妻制もいいんやろうねぇ」
 と妙に納得している様子なのです。逆におかしいんじゃないかと思ったほど、理解のいい母でした。

妹さんや、友人の反応も「あんたらしい」というものだったそうです。

そして夫となるジャクソンさんのことは、こんな風に書かれていました。

P288
 ジャクソンはいつもそう。あるがままにそれを捉え、受け入れる。日本が無駄の多い国だったり、人々に余裕がなく忙しい国だったりしても、それが良いとか悪いとか、好きとか嫌いではなく、「それが日本だ」と受け入れるのです。

P291
「あなたはどうしてマサイの伝統的な生き方を続けていきたいの?どうしてそんなにマサイの伝統が好きなの?」
・・・
「伝統を捨てて自分たち本来の生き方を変えた人たちで、幸せに生きている人はいないように見えるんだ。だから僕は伝統を捨てたくない。それに、僕らは伝統と共に生きているのがとても幸せだから」

今この地球上に、いろんな価値観でいろんな暮らしをしている人が、いっぱいいるんだよなー・・・と、当たり前かもですが(^_^;)なんか感動してしまいました。