こちらは夏木マリさん。なんとなく連日エッセイが続いています(;^ω^)
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私はこれまで、いろいろなことを諦めてきました。友人だったり、お金儲けだったり、子供を産むことだったり……。「諦める」という言葉を使うと、少し誤解されるかもしれないけれど、「整理する」と思ったらどうでしょう。
女って、あれもこれも、なんでも欲しがる生き物。だけどどんなに欲張ったって、全部いっぺんには手に入らないでしょう?だから整理するの。必要だと思ったことはキープして、これはいらないと思ったらきっぱり捨てていく。物欲も、仕事も、人間関係だってすべて整理できる。
今の私が、こういう風にきっぱりと言えるのは、『印象派』によって鍛えられた部分がとても大きいです。・・・
’93年にひとり舞台としてスタートした『印象派』は、私のアートワーク。・・・セットも使わずに身体表現ひとつで感動してもらえることができたらそれが一番。むしろそれは、私が追求したい表現そのもの。でも、ついああだこうだと色々手を出してみたくなる。でもある時、それって、人生と同じだな、と気づきました。欲しいと思えば色々欲しいし、今贅沢だと思えば捨てられるものはいっぱいある。それは自分でゼロから作品を創っていく作業の中でたどり着けた考え方だったかもしれないし、『印象派』を始めたことで、物事の考え方がすごくシンプルになった。物事は、考え方ひとつなのよね。
何にプライオリティを置かなければいけないか、何が大切か。その考え方が、自分の人生にもそのまま置き換わると思ったの。だって、人生って自分でクリエイションしていくものだから。
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私の場合、判断基準はすごく明快。要は、好きか、嫌いか。
人は、幸せになるために生きていると思います。そのために大切なのは、「自分を知る」ということ。自分を知らないことには、幸せにはなれない。それは長年、女性誌での連載を通して迷える女性たちのお悩みを聞きながら、自分自身にも繰り返して思ったことです。
「自分を知ることを、知る」。それは、自分のことばかり「考える」こととは、ちょっと違うの。理屈でああだこうだと考えるのではなくて、自分は何が好き?何が嫌い?何が大好きなの?そうやって自分自身を掘って、掘って、掘り下げる。自分がどういう生き物なのか、自分の本能を知ることを知りなさい、ということです。
「自分を知る」と、生きることがすごく楽しくなると思う。生きることが楽しくなるということは、幸せになることでもあると思うから。
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とにかく〝行動あるのみ!〟なのだと思います。行動を積み重ねていくことで、自分らしさがわかってくる。時間をかけて、好きなものと嫌いなものを知るのは大変な作業だけど、自分を知る上でとても大切なことだと思います。
例えば食べ物でもいい。映画でも音楽でも、なんだっていいの。自分が今まで食べてきたものの中で、好きなものはなあに?何が嫌いで食べてこなかった?思い返せばわかるでしょ?会社に行く通勤路。いくつかルートがある中で、なぜこの電車に乗っているのだろう?乗り換えが楽だから?少し遠回りだけど混まないから?車窓から見える風景が好き?それがわかれば、「ああ、私はこういう景色が好きなんだなぁ」って気づける。ほら、楽しいでしょ。どんなに小さなことでもいい。とにかく細かいことから積み重ねるしかないのよね。要は考え方次第なの。テーマは何でも、「好き・嫌い」を考えてみる。自分を知るためにはそういう思考を持っておくということ。その思考が身についていれば、何かもっと本質的な問題にぶち当たった時に、すごくシンプルに、自分らしい選択が自ずとできるようになるはずだから。
自分を知る上では、時には周りの人の意見に耳を傾けることも大切だと思います。だって、人は素直じゃないと大成できないのです。一番の敵は、頑固。しかも、人は年をとればとるほど頑固になってくるから、そこは気をつけなければいけないと、私自身このごろ感じます。周りの意見に従うかどうかは別としても、私はとにかく一度耳を傾けることは心がけています。スポンジみたいな柔軟性がいい。私はいつだって、何色にでも変わりたいとも思っている。
