人生は単なる空騒ぎ

人生は単なる空騒ぎ ‐言葉の魔法‐

 ジブリ鈴木敏夫さんの本です。

 たくさんの書が載っていて、字ってこんなに表情があるんだと、改めて新鮮に感じました。

 

P21

シェイクスピアは言った。人生は単なる空騒ぎ。意味など何ひとつない。

ウディ・アレンの映画『恋のロンドン狂騒曲』は、そういう台詞で始まります。元になっているのは『マクベス』の台詞ですが、映画をきっかけに、この言葉が新たな響きをもって聞こえてきました。もともと人生に意味はない。だったら意味を付ければいい。自分の人生は自分で決められる。ある種の実存主義ですよね。ぼくはそういうふうに考えて生きてきました。

 

P25

 学生時代から詩も好きで、よく暗唱していました。いまでもふと口をついて出るものもあります。たとえば、茨木のり子さんの「さくら」。

 

 さくらふぶきの下を ふららと歩けば

 一瞬 名僧のごとくにわかるのです

 死こそ常態 生はいとしき蜃気楼と

 

 人間というものは、死んでいるのが本来の状態。生きている時間は夢うたかたのようなもの。それでも人生は愛しい―名僧が長い修行を経て辿りつくような死生観を、とても端的な言葉で表現している。つくづく感心します。