世界に一軒だけのパン屋

世界に一軒だけのパン屋 ~地産地消で年商十億円 北海道『満寿屋』三代の奇跡~

「サービスの達人たち」を読んで、この著者の本を他にも読んでみたいなと思って読みました。

これは「満寿屋」https://www.masuyapan.com/というパン屋さんの話で、小麦を作るところから始まって、初めて知ることばかりでした。

 

P121

 わたしが満寿屋のことを「世界に一軒だけのパン屋」と呼ぶにはわけがある。満寿屋は基本のパンの場合、すべてを地元の原料だけで作ることができるからだ。小麦、水、牛乳、バター。この四つはもちろん地元産である。ただし、ここまでなら地元産でまかなっているパン屋は世界中に何万軒とあるだろう。また、地元産野菜を使うパン屋もある。フランスやイタリアやドイツのパン屋が小豆やじゃがいもを使うかどうかわからないけれど、どこの国にも地元産の野菜を具材にするパン屋は少なくないだろう。

 問題は砂糖と酵母だ。このふたつを地元で調達しているパン屋となると、とたんに少なくなる。酵母は自家製で作るとしても、砂糖を地元産にすることは簡単ではない。

 砂糖はさとうきびもしくは甜菜からできる。さとうきびを作っているのは熱帯だから、小麦が育ちやすい場所ではない。つまり、さとうきびと小麦の両方を栽培できる場所はまずないと言っていい。一方、甜菜と小麦は両立する。しかし、世界的には甜菜を飢えている地区は非常に稀だ。

 満寿屋は砂糖も酵母も目の前の畑から取れたものを原材料として使っている。しかも、満寿屋が使う量は半端なものではない。チェーンであり、十億円という売り上げ規模のパン屋である。おいしいパンを作る店は世界中にある。おいしいパン屋は日々、増えている。ところが、砂糖と酵母まで地元産の材料にこだわり、三代もかけてそのパン作りを実現させ、売り上げ十億円にまで成長させた店は世界中でおそらくここだけだろう。