アンテナを張る

達人 吉沢久子 老けない 生き方、暮らし方―軽やかに、自由に、自分らしく 「ひとり」を楽しみ、慎む

「アンテナを張る」というキーワード、明るい終活セミナー中に、参加者のOさんから何度もお聞きして、大事だなことだなと思っていたら、この本にも出てきました。

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 「90年以上生きてきても、知らないことのほうが多いんです。経験を重ねれば重ねるほど、知らないことが増えてくるんです。もう知らないことだらけ。全部は無理でも、ひとつでも多く、知りたいと思っています」
 介護をしているとき、寝たきりの姑を抱き起そうとして、吉沢さん、ぎっくり腰になったことがある。
「困ってしまって……でも、私の首に寝てる人の腕を回してもらえばラクに起こせると、介護の仕事をしている知り合いが教えてくれました。
 それでやってみたら、本当にすーっと姑を起こすことができた。感激しました。もっと早く聞けばよかった、と。
 専門家は、すごい知恵をもっているんです。
 以来、わからないことは、専門家に聞いてみることにしました。
 聞き上手でありたいとも思っています。とにかく一所懸命に聞くんです。
 こちらが本気で聞けば、若い人もみんな、一所懸命答えてくれます。一度聞いてわからなければ、わかるまで聞きます」
 吉沢さんは常にアンテナを張ることも心がけている。
「アンテナを張るというと、たとえば世の中の動きをウォッチングするみたいに考えがちですよね。でも、それだけではないんです。
 自分の気持ちにアンテナを張るのもおもしろいの」
 朝の散歩で感じたこと。人と話して、あっと思ったこと。
 庭を見てふと思ったこと。新聞を読んでびっくりしたこと。
 あるいはおいしいと思うものに出合った喜び……。
「毎日、何かしら、そういうことがありますよね。
 そしたら、なぜ、自分はそう思ったのか。どこがおもしろいのか。どうして驚いたのか。あらためて考えてみるんです」
 ・・・
 「年齢を経ると、外に出る機会も少なくなります。でも心は止まってなんかいない。動いています。
 自分が何をどう感じているか、その動きにアンテナを張りましょうよ。自分を客観的に見つめる目をもつ……すると、自分をもっとおもしろがれるようになります。
 人はみな過去を背負って生きているけれど、生きるのは過去ではなく、幾つになっても、今これからです。せっかく生きるのだから、よく見て、よく聞いて、よく考えて味わって歩いていかなければもったいないでしょ」