セレンディピティ

うたがいの神様 (幻冬舎よしもと文庫)

千原ジュニアさんのエッセイを読みました。
このセレンディピティの話、おもしろかったです。

P140
セレンディピティ」という言葉があります。思わぬ偶然や幸運をひきよせる力、という意味です。
 僕にも、いろんなセレンディピティがありました。
 何人かで飲んでる時に、「なんで吉本に入ったか?」みたいな話になって。そこにいた後輩が、「実は、竹内力さんがきっかけなんです」と。そいつは広島出身なんですが、「お笑い芸人にすっごい憧れてるけど俺なんかが芸人になれるわけがないし、無理な話や」って思ってたらしいんです。それで、高校生ぐらいの時に、ちょうど「101回目のプロポーズ」に出ていた竹内力さんが、トークショーかなんかで、そいつの住んでる広島のスーパーに来たと。みんなで見に行って、トークショーが終わって舞台袖にはける時に、竹内力さんがくるっと振り返って「おまえ、イイな」って指差したと。「いつか会えるような気がするよ。やりたいことやったほうがいいぞ」って。何十人もいる中でそいつだけが声をかけられたわけです!それで衝撃受けて、「こんな俺でも芸人になれんのかな!?となって、芸人になったんです」って。「すごい話やな、それ!」って言ってたら、カランカランカランと店のドアが開いて、入口から竹内力さんが入ってきたんです。
「えーーーーーーーー!」ですよ。
 それで僕が、そいつのこと紹介して。「覚えてないけど、そんなこと言ったのか」みたいな話になって。握手しながら「お互い頑張りましょう」って言ったという……なんかもう、セレンディピティですよ。
 ・・・
 こういう話もあります。僕がバイクで事故ったのが3月26日で、あったかくなってきて、フルフェイスのヘルメットから半キャップに、その日の朝に替えた。それで電柱に顔からグシャッていって、骨もバッキバキになったんですが……。でも、これフルフェイスだったら無傷だったんです。でも、顔は無傷やけど、その代わりぜんぶの衝撃が首にきて、死んでたと。顔で吸収してるから、首は一切大丈夫で死なずにすんだそうです。「その日に、なんでそれを替えてんねん!?」ということです。偶然なんですが、あと一日あたたかくなるのが遅ければ、僕はこの世にいなかったかもしれない。
 セレンディピティ。めっちゃ覚えづらい言葉やけど、実感するわぁ。