今できることは目一杯

おとなになるってどんなこと? (ちくまプリマ―新書)

今しかできないことを最優先に大事にしたいです。

P94
 私は、おばさんになったらおしゃれもしなくなるし、体型も崩れるし、あつかましくなるし、声も大きくなるし、豹柄など着るようになり、人生は終わってしまうのではないかと思っていました。
 でも、そんなことはなく(一部そうなっているのは否めないけど……特に豹柄と体型)、自分のことが自分でよくわかるようになるから、どんどん楽になっていくのです。
 行きたくないレストランも、飲みたくない飲み物も、着たくない服もわかってくるし、もっと言うと会いたくない人もわかってくる。そうすると自分で自分の人生を創造することができるようになる。
 だいたいよく考えてみたらわかると思うんだけれど、子どもってちっとも自由なんかじゃないです。基本的に親と学校の枠のなかで考えなくちゃいけないのだし、経済的にちっとも自由がない。暮らし方も選べないし、友だちも知っている範囲で見つけるしかない。今からあの時代に戻れと言われたら冗談じゃないと思うと思う。あふれるエネルギーがその不自由さを補っているだけで、ちっとも楽でも自由でもない。
 それでも若いころの自分の写真を見ると、しみじみと思うのです。
 なんてきれいな体の線、なんという元気さ、回復力、体力!この頃にしかできないことをもっとやっておけばよかった、と。
 この頃の自分はそんなことを知らず、先になればなにかもっといいことがあるはずだと思って、いろいろなことを制限していたのです。もっとビキニを着たり、派手な化粧をしたり、バカ食いしたりすればよかった。けっこうしてたけど、もっともっと。
 そして、はっと気づくのです。
 そうか、あと十年か二十年後の私が見たら、三十年後に生きているとして健康でなかったりしたら、今の私に対して、全く同じことを思うに違いないんだ!と。
 だから、今できることは目一杯。
 それが未来の自分自身からのいちばんだいじなメッセージだと思います。
 そのことをほんとうに理解することが、大人になるっていうことかもしれません。