こちらは、人生っておもしろい、最期に振り返るまでわからないな〜…なんて思いを巡らせてしまうような出来事でした。
P194
TVチャンピオンでの優勝の感動冷めやらぬなかで、いっきに現実に引き戻される出来事が待っていました。それは今後の進路を相談する個人面接です。高校3年生、そろそろ卒業後どういった進路に進むのか、具体的に考えなければいけない時期にさしかかっていたのです。勉強もあまりせず、ずっとお魚ばかりに夢中だった自分の学力はというと、なんとか進級できているくらいのレベル。
面接で、担任の先生は、
「無理だな、大学。」
と、単刀直入で、かつきびし〜いお言葉。小学校からのあこがれであった東京水産大学を、受験できるレベルにすらなっていなかったのでした。
結局一芸入試でチャレンジするも、面接で「お魚が大好きなんです」しか言うことができず、不合格になってしまったそうで…でも人生っておもしろい、という展開が、後の方のページにありました。
P241
2006年の秋。一通の報せが届きました。なんと!東京海洋大学(2003年に東京水産大学と東京商船大学が統合)からでした。
たくさん学ばせていただいている教授、刑部先生が自分を客員助教授(現・客員准教授)に推薦してくださったのです。
「ヒャー!!」
とつぜんの報せに、最初、にわかに信じることができませんでした。
(自分が?客員助教授?東京海洋大学の!?)
「まさかあ。それはないでしょう。わかった!!どっきりなんじゃない?」
「本当ですよ、さかなクン!」
・・・
それでもまだ夢を見ているような感覚でした。それも無理はありません。だって東京海洋大学といえば、名前は変わったけれど、ずっとあこがれていた、あの東京水産大学です。世の中にたくさんある大学の中で、唯一いきたいと思い、ずっとあこがれて、けれどもいきたくてもいくことのできなかった大学なのです。客員助教授となれば、そこの先生になるということです!そんな奇跡、かんたんに信じることができるでしょうか。
小学生のころ、卒業文集に書いた言葉を思い出していました。
「東京水産大学の先生になって、調べたお魚のことをみんなに教えてあげたい。そして図鑑を作りたい。」
お魚に夢中になりすぎて大学にも入れなかった自分が、お魚に夢中になりすぎたおかげで、小さいころから持ちつづけていた夢が目の前までやってきました。