私は錯覚?

フューチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する

面白かったところです(^^)

P51
 脳には、判断を下すただひとつのホムンクルスやCPUやペンティアムチップがあるのではない。むしろ、指揮中枢にあるさまざまなサブ中枢が、CEOの注意を引こうと絶えず競い合っている。そのため、思考にスムーズで安定した連続性はなく、さまざまなフィードバックループの不協和音がしのぎを削っているのだ。あらゆる判断を連続的に下す一個のまとまった総体として存在する「私」という概念は、われわれ自身が意識下の心で生み出す錯覚なのである。
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 ハーヴァード大学の心理学者、スティーヴン・ピンカーにインタビューをしたときには、意識がどうやってこんなごたまぜのなかから現れるのかと尋ねた。彼は、意識は脳の中で荒れ狂う嵐のようなものだと答えた。・・・「われわれは、脳の管制室に、五感の画面に目を走らせ、筋肉のボタンを押している管理者たる『私』がいるという直感を抱くが、それは錯覚だ。意識は脳のあちこちにまき散らされた数々の事象が渦巻いてできたものだ。これらの事象は、注意を引こうと競い合い、あるプロセスがほかを打ち負かすと、脳はあとから結果を合理的に解釈し、ひとつの自己がずっと取り仕切っていたのだという印象をでっちあげる」