希望と絶望

希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話

この本の著者は、20歳の時に突然難病になり、13年間闘病生活を続けたそうです。
そのような方が書いたからこそ、これほど魅力的な本になったのかなと思いました。

P280
 そんな生活の中で、いちばんの支えになったのがカフカの日記や手紙でした。絶望の最中にあるときは、明るい言葉というのは、なかなか心に届きません。ただ、まぶしすぎるだけです。
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 闘病生活の中で、その後、私はゲーテも読むようになっていきました。最初は、かなり反撥を感じました。あまりにも恵まれすぎています。そして、頭にくるほど明るい。
 でも、それがあんまり行き過ぎているので、思わず笑ってしまいます。その突き抜けた明るさには、やはり励まされるものがあります。なんとも魅力的で、面白い人です。
 気がつけば、そのときどきによって、カフカの言葉を支えにしたり、ゲーテの言葉を励みにしたりしていました。
 カフカゲーテを愛読していました。カフカも、やっぱり反撥したり、あこがれたり、愛憎半ばしています。でも、生涯、読み続けます。カフカが旅をしてまで昔の家を訪れた作家は、ゲーテだけです。その家の中で、時代を隔てて、希望の人と絶望の人が、同じ場所に立ったのです。
 希望と絶望、これはやっぱり両方ないといけないと思います。
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「最も幸福なときにも、最も苦悩しているときにも、わたしたちは芸術家を必要とする」
ゲーテも言っています。
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「自分の城の中にある、自分でもまだ知らない空間。それを開く鍵のような働きが、多くの本にはある」
カフカは言っています。

この本を読むと、カフカが言うように、自分の中の日頃あまり探っていない空間に、光が当たって風が通るような感覚になりました(^^)