自分をたのみにする

なるほどの対話 (新潮文庫)

きのうご紹介した本にあった、興味深い話です。
少々長くなりますが(^_^;)
頭ではわかるような、わかりきらないような、なのですが、体は賛同して頷いてるように感じました。

P188
河合 ・・・自分で判断できて、自分で自分をたのみにするという人は、まだ少ないんちゃうかな。しんどいからね。自分をたのみにするのは、苦しいけど楽しい。でもみんなは、「楽しい」の方だけをやろうとするから、急に「苦しい」に落ち込んだりする。

吉本 「自分をたのみにする」というのは、言葉の響きのよさとは反対に、情けなーい、かっこ悪ーいことの方が多いと思う。

河合 内実はそうですよ、みんなから馬鹿にされたり。

吉本 トホホって思ったり。その方が、たぶん多いと思う。他にできないからしょうがない。・・・「だってそうするしかないんだもん」という弱々しいもののような気がします。

河合 ところが人は、「自分をたのみにする」という言葉を聞いて、強いイメージを持つんです。でも、ほんまはしょうもないものです。でも、「自分をたのみ」にしないと、せっかく生まれてきたのに、どうしようもないでしょ。・・・
・・・「自分がやる」ということは、ぜんぜんわけもわからん、自分が思ってもみないことがいっぱい起こる。そういう意味では、「自己実現」という言葉が、まったく誤解されて使われていますね。あんな、わけのわからん、苦しくてかっこ悪いことはないのに、みんなかっこええと思ってる。・・・

吉本 いやなことはしないようなイメージがあるのでしょう。言葉としては平凡だけれど、自分と向き合う、それだけでじゅうぶん苦しかったりつらかったりイヤだったりするわけだから。そういうことが「自己実現」ということだと思う。

河合 ・・・他人がかっこいいと思っていることを、自己実現と呼んでいるだけやと。だから、誤解されるから、あんまり使わんようにしてるんです。
 自分と向き合う作業は、人間にとって必要なんです。必要というか、せっかく生まれてきたんだから、自分は他のどこにもいないし、おそらくまあ世界に一人でしょう。しかも、どうせ死ぬわけだから、その間ぐらい自分を大事にしないと。

吉本 なんていうか、人が思っている自分というか、「人はこう思うだろうな」っていうのを取り払ったその人が垣間見えるとき、そういうときに感動しますよね。・・・人びとは、そういうことをもっと素晴らしいと思っていいと思う。人全般に対してそう思います。