闘う頭脳

羽生善治 闘う頭脳 (文春文庫)

羽生善治さんの「闘う頭脳」。

頭を心地よく刺激されるような読み心地でした(^^)

 

P46

 エジソンの有名な言葉に「一%のひらめきと九九%の努力」というものがあります。将棋の世界で考えても、努力を積み重ねて将棋を深く理解していればいるほど、次の新たなアイデアが浮かびやすいのは間違いありません。

 ただし「この場面ではこう指せばよい」といった知識は、思考の基礎を形作るものとして絶対に必要なのですが、それだけをいくら積み重ねてもアイデアにはつながりません。

 私は「理解」という言葉を使っていますが、局面をより良くするアプローチの仕方や、局面の良し悪しを判断する方法を知ることで、思考の中から余計なノイズが取れます。そうあると、状況がよりクリアに見えるようになるので、新たなひらめきが浮かびやすくなるのです。

 しかし、本当に独創的な人たちは、このような基礎や理解の積み上げを一番嫌うし、やりたがらないし、関心もありません。

 そもそも基礎を学ぶことと、人と違うことをするのは、相反する能力です。知識はどうしても先入観や思い込みにつながるので、基礎を学ぶことが独創的な力を呼び起こすにはマイナスになることさえあります。だからと言って基礎がなければ、アイデアは何も浮かんできません。

 そこで、うまく能力を伸ばしていくためには、スイッチを次々と切り替えることが必要なのだと思っています。「考える」という作業の中で、「覚える」というスイッチと「発想する」というスイッチをうまくパッパッと入れていくのです。