結婚も出産もせずに親になりました 非婚のわたしが養子と作る<新しい家族>

結婚も出産もせず親になりました~非婚のわたしが養子と作る〈新しい家族〉

 社会にある様々な問題に考えさせられつつ、こういう家族のあり方もいいなと思わせてくれる本でした。

 

P5

 わたしは結婚をせずに、2人の女の子を養子に迎えた。これを知った人からは不思議がられることも多いけれど、非婚女性にはうらやましがられることもある。

 養子を迎えるずっと前から「結婚はしたくないけど子どもは育てたい」という女性の話をときどき耳にすることがあった。現実的な困難さえ克服できるなら、結婚をせずに出産をしたり養子を迎えたりして子どもを育てたい、と思っている女性は多いらしい。

「結婚をせずに養子を迎えてよかったこと」とは?

 まず、わたしには配偶者がいないので、母や姉妹が自分の家のように気兼ねなくわが家に出入りして、ときには一緒に暮らしながら育児をサポートしてくれる。実母と夫の折り合いが悪くて、実家に頼れないという女性も多いけれど、わが家ではその心配もない。シングルマザーの場合はもちろん、共働きの家庭であっても、夫より実家のほうが頼りになることは少なくない。・・・

 次に、夫婦が子どもを授かったり養子を迎えたりした場合、2人が不仲になって子どもが被害を受けることがある。・・・父親と母親の教育観のズレが問題になることも多い。その点、わたしの娘たちは深刻ないざこざを経験することなく、ずっと安定した環境で育ってきた。ありふれた夫婦ゲンカすら、一度も見たことがないわけだから。

 

P14

 昔から、結婚をしてもしなくても養子を迎えたいと思っていた。未来を楽観できない世の中で子どもを産みたくはない。きちんと面倒をみてもらえていない子どもたちが大勢いるのに、わたしが新しく産まなくてもいいんじゃないかな?こんな考えも頭の中を占めていた。

 そんなわけで子どもを産むつもりはなかったけれど、子育てはこの世で最も価値のあることだと思っていた。・・・

 ずっと別々の人生を歩んできた異性と結婚して同居するのはあたりまえだとみなされているのに、養子縁組は特別視されていることに納得がいかなかった。結婚を後悔している人は多くても、子どもを育てていることを後悔している人はあまり見たことがない。わたしは結婚の成功率より、養子縁組の成功率のほうがずっと高いと思う。

 ・・・2008年、わたしは「独身者でも養子を迎えられる」という情報を発見した。制度が変わったのだという。・・・

 時が来た、と思った。・・・

 ・・・

 2010年に長女を、2013年に次女を養子に迎えた。2人の子どもと養子縁組をしたことは、わたしの人生で最もすてきな選択だった。娘たちと一緒に無我夢中で公園を走り回り、連休に家族サービスで訪れたウォーターパークで誰よりもはしゃいでウォータースライドの前に並んでいる自分に気づいたとき、子どもがいなかったらこんな経験をする機会はなかっただろうなと考える。週末に子どもたちとゲラゲラ笑いながらおしゃべりをして、やるべきことを一つも終えられなかった夕方、ふと今がわたしの人生でいちばん幸せな瞬間かもしれないと思ったりもする。

 

P38

 母はありとあらゆる苦労をしながらわたしたちを食べさせて勉強させてくれた。でも、父と別れなかったせいで子どもを安全に保護することには失敗した。配偶者が子どもの安全と幸せを脅かす存在になることはめずらしくない。両親がそろっている家庭こそが正常だという固定観念が子どもに害を及ぼしてしまう。

 母は自分が結婚に失敗したことを知りながら、なぜわが子に結婚しろと言ったのだろう?母の周りには結婚に成功した人もいれば、そうでない人もいる。韓国の高い離婚率と、どう見ても離婚したほうがいいのに離婚していない人の割合を考えると、結婚の半数は失敗しているのではないだろうか。50%という成功率は、人生を賭けるほど高い確率とはいえない。

 ・・・

 わたしは2人の養子を迎えて安定した家族を作ることによって、たしかな幸せを手に入れた。会社勤めとの両立のためには子育てをサポートしてくれる人が必要で、娘たちと毎日一緒に過ごす時間をたっぷりとるのは難しいけれど。

 それは、結婚していたとしても同じだったと思う。男性が専業主夫になるケースはほとんどないし、わたしも専業主婦になるつもりはなかったから。もし結婚をすれば、夫がどんな人なのか、夫婦関係はどうなのかによって想定外のことが起こり、わたしと娘たちの生活が左右されることもあるだろう。すでに幸せな状態で、あえて想定外の要素を追加することには慎重にならなくてはいけない。

 不幸な結婚生活を送った母は、わたしと娘たちの幸せな暮らしを見ても、しばらくは「結婚は絶対にしなくてはいけない。子どもには母親と父親の両方が必要だ」という固定観念から抜け出せなかった。それほどまでに〝ふつうの家族〟という概念はいまだ根強く残っている。

 

P142

 わたしは小学6年生のときに身近な人を観察して、結婚は女性にとってメリットがないということに気づいた。・・・

 ・・・

 そこでわたしが出した結論は、「何としてでも経済力をつけて、結婚はしない」ということだった。学校で「一生誰とも結婚しないことにする」と親友に話したら、その子はわたしを上から下までじろじろ見て、「何の欠点もないのに、どうしてそんなことを考えるの?」と言った。わたしとは違って、結婚に肯定的な女の子もいたらしい。

 大人になってからは、心から愛し合ってお互いを尊重している夫婦も存在するのだと知った。ある程度の妥協ラインを決めて、それぞれの領域を尊重しながら暮らしている夫婦も多い。けれど、ソウルメイトと出会って結婚する機会が誰にでも訪れるわけではない。運命の人だと思っていたのに、人生という道のりをしばらく一緒に歩む同伴者に過ぎなかったのだと途中で気づくこともある。配偶者だけではなく、その家族がセットになってついてくるというのも、多くの人が結婚をためらう大きな理由のひとつだ。12歳の頃とは世の中が大きく変わったけれど、今でも私にとって非婚という選択がベストだったと思っている。

 

P187

 わたしの養子縁組を仲介してくれた機関の社会福祉士は、年長児を引き取って育てるのがどれだけ難しいことなのかを説明したうえで、乳児を引き取ったほうがいいと助言してくれた。子育て経験のない独身の会社員に対して、至極まっとうなアドバイスだった。・・・

 養子縁組機関の専門性と責任感の高さは、団体や担当者によっても異なる。専門家と呼ぶにふさわしい人材がいない団体もある。・・・

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 養親による児童虐待事件が発生すると、子どもを引き渡す前にどうしてもっと厳格な審査をしなかったのかと関連機関を批判する声が上がる。けれど、虐待事件を起こした人の多くは「自分がそんなことをするとは思わなかった」と口にする。本人にも予測できないことを第三者が面談や書類だけで見抜くのは難しく、その予測の根拠と妥当性を検証するのも難しい。児童保護専門機関の社会福祉士もストレスによる離職率が高いという。関連機関や担当者をやり玉にあげても、児童福祉制度の根本的な改善にはならない。

 周囲ができるのは、赤ちゃんと養育者が深刻なストレスを受ける状況を予防して、問題がありそうなときは早めに介入することだ。そのためには要保護児童が新しい家庭にすっかりなじむまで、専門性の高い責任者が経過観察を続けなくてはならない。

 

P233

 それまで会社で認められていた社員でも、子育て中に評価が下がることはめずらしくない。わたしは娘を育てながらも残業や休日出勤をすることが多かった。ところが、子どもをみてくれる人がいないという理由で年に2回の海外出張に行けなくなり、1泊2日の社内ワークショップも欠席したら、人事部から警告が入った。

 きちんと成果は出していたのに、昇給率は社員の中でいちばん低かった。手柄は他の社員のものになり、組織の問題は私のせいになってしまった。年齢も高いし、まだ子どもも小さいから、どんな待遇であっても会社を辞めることはないと思われたらしい。子育てが弱みとなるこの社会で、わたしは見くびられやすい弱者なのだ。

 それでも、時間はわたしに味方してくれる。娘たちが成長して自立していくにつれて、親も自由になる。わたしたちは強い絆で結ばれた、無敵の美女三銃士になるだろう。

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 80ヵ国で26万人の職員が働くペプシコ社のCEOを12年間務めたインドラ・ヌーイは、2018年の退任後、誰もが仕事と家庭を両立できる世の中を作るために尽力すると宣言した。経営者として目覚ましい成果を上げながらも、ペプシコCEOより2人の娘のお母さんと呼ばれることを好んだヌーイは、ミレニアル世代の娘が自分のように家庭とキャリアの間でギリギリの綱渡りをせずに生きられるように、世の中を変えようとしている。