堺雅人さん②

文・堺雅人2 すこやかな日々

 面白かったので、二巻目も読みました。

 ここは「ツレがうつになりまして」に出演することになった頃のお話です。

 

P117

 うつ病の役をやることになった。

 ・・・

 ところで

「やさしい」

 というコトバは「やせる」を形容詞化したものらしい。「やさし」はもともと、身がやせほそるくらい

「つらい、肩身がせまい、はずかしい」

 という意味なのだ。山上憶良の歌

 

 世の中を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば

 

 にでてくるのが、そうした「やさし」だ。むかしは今とちがって、痩せることにいいイメージはなかったのだろう。

 時代がくだると、「やさし」には風流とか上品という意味がでてくる。これは心くばりや気遣いなど

「まわりのためにあれこれと、こころのカロリーを消費する」

 ところから生まれたものではないだろうか。現代の「優しい」もまた、おもいやりがあったり、とげとげしさを抑えたりしている状態のことである。

 そうおもうと、他人とくらべて自分をせめ、うしろめたい気分になり、いつも不安でゲッソリやせてしまううつ病患者は、こころのカロリーを消費する、もっとも

「優しい」

 ヒトビトなのかもしれない。