お天道様の下で考える

沖縄時間―本物のスローライフの見つけ方

「いやなことは、お天道様の下で考えよう」
 これはとても大事なことですよね(^^)

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 もう三、四年前になりますか、カナダのモントリオールで・・・ある店で、カウンターに置いたバッグを置き引きされてしまいました。ちょっと目を離したスキのアッという間の出来事でした。
 バッグには、財布もカードもパスポートもみんな入っていました。その上悪いことに、いつもならスーツケースにしまっておくアクセサリー類までたまたま入っていて、被害総額二〇〇万円ぐらいだったでしょうか。それはたいへんな額です。
 それでも、バッグがないとわかった瞬間の私の反応は、「たいへん!」というより、「ああ、またやってしまった」でした。
 何しろ、そそっかしい性格は天性のもの。旅先で「これは大事なものだから」とセーフティーボックスに入れておいて、そのまま忘れて帰ってきてしまう、なんてこともしょっちゅうなのです。盗まれなくても、自分でなくしてしまったりするのですから、まったく始末に負えません。
 その時は、さすがに警察へ行ってちゃんと被害届も出したのですが、一緒にいた人がしきりに「岸さんってスゴイですねえ」と感心するのです。
「どうして?」と聞くと、「私だったらそんなに冷静でいられない。きっともう泣き出してますよ」と、まるで自分が盗難にあったように目を潤ませます。
「だって、過ぎてしまったことはしょうがないじゃない」
 私はアハハと笑いました。
 ナンクルナイサァ(何とかなるさ)。
 ・・・
 ・・・過ぎてしまったことをクヨクヨ考えないのは、私なりのストレスをためないコツです。いやなこと、辛いことがあった時、布団の中で考えているとどんどん暗くなって落ち込んでしまいます。
 だから私のモットーは、
「いやなことは、お天道様の下で考えよう」
 明るい太陽の下で考えると、あんなにいやだったことがどうでもいいことに思えたり、もう出口なしの八方ふさがりだったところに光明が見えてきたり。人生、いいことも悪いこともあるけれど、どんな土砂降りもいつかは必ずやむのです。
「朝がこない夜はない」といわれるように、夜明けは必ずやってきます。
そして、太陽の光は、誰のもとにも平等に降り注ぎます。どんな暗闇も明るく照らしてくれるのです。
 ・・・
 最近は、「感謝する」ということが日常になりました。私たちを生かしてくれる大地に感謝し、太陽に感謝する。そうすることで「何が起きても大丈夫」と、ふと心が軽くなるのです。
 明日はどんな一日になるのかしら。
 何歳になっても明日を信じて、好奇心いっぱいで生きていきたい。
 生かされている命を大切に、世のため人のためにできるだけのことをしていきたい。結局は自分がやりたいことをやるのですから、自分のためなのかもしれませんが……。
 私は今、そんなふうに思っています。