おとなになる

おとなになるってどんなこと? (ちくまプリマ―新書)

よしもとばななさんの「おとなになるってどんなこと?」
共感することがたくさん書いてありました。

P8
 ・・・たったひとつ言いたいことは、
「大人になんかならなくっていい、ただ自分になっていってください」
 ということです。それがみなさんがこの世に生まれてきた目的なのです。

P14
 大人になった後は、子ども時代を取り戻して本来の自分に戻っていくことがいちばん大切です。
 いったん大人になってから、あらゆる場面で最も必要とされるのが子ども時代の感覚なんです。それだけが人生を進むための羅針盤なのです。どの職業の人でもどの年齢でも変わりません。
 ただ、子ども時代に体験したことの価値や、自分がもともと持っているものの重要さというものは、いったん大人になってからでないと全く意味をなさないので、人生ってほんとうによくできているなあと思います。
 今思うと、中学生のときの私は一種の鬱状態にあったんだと思います。
 ・・・
 しかし、やはりあの淋しさには意味がありました。あれを味わったからこそ、そのあとに大人になれたんだと思います。
 辛いことは、その場ではほんとうに辛いし自分を深いところまでゆがめるけれど、あとで必ずなにかの土台になります。そう思って辛抱するしかないんです。ポジティブ思考でも立ち向かえないし、ないことにもできません。みじめでちっぽけな自分と向き合い、砂を噛むみたいな毎日はきっと人生に必須な科目なんですね。

P30
 ・・・言葉にしてしまったら悲しくてしかたがないから、考えないようにしました。
 それはもう私が大人になったからだと思います。
 心の中では小さい子どものように泣き叫んで、だだをこねたかったと思いますが、それをじっと内側に秘めていました。
 でも、私は思います。
 いちばんだいじなことは、自分の中にいる泣き叫んでいる子どもを認めてあげることです。ないことにしないことです。そうすると心の中に空間ができて、自分を大丈夫にしてくれるのです。
 どんな年齢になってもそれは同じだと思います。
 大人になるということは、つまりは、子どもの自分をちゃんと抱えながら、大人を生きるということです。