すごい制度

世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論

 この制度はすごいなぁと驚きました。

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 ・・・「・・・ところで、あなたは何の広報をしてるんですか?」「法務省で『イエローリボンプログラム』の広報をやってるねん」「なんですか?それ?」「元受刑者の社会復帰を応援する活動のことやで。受刑者ってイメージ悪いやん。だから出所後の雇用先を見つけるのに苦労すんのよね」「たしかに」「で、お金が手に入らへんからまた犯罪に手を染めてしまう。そんな悪循環を断つためにあるねん。まずは国民の意識から変えていく必要があるから、広報は重要やで」。
 あとで調べたところ、このプログラムは日本の映画『幸せの黄色いハンカチ』がモチーフだそうです。
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 受刑者が刑務所の外に出てボランティア活動ができる。一面から見るととてもよい活動ですが、地元の人たちからの反対はないのでしょうか。そのまま疑問をぶつけてみました。
「特にないで。問題も起きてへんし。受刑者への偏見をなくすためには、受刑者が一般社会の中にいるのが当たり前の状態にするのがいいと思うねん」・・・
 なるほどたしかにとは思いますが、それを現実にするのは難しそうです。実際、どんな仕事をしているのでしょうか。
「刑務所の外で労働もできるんですか?どんな?」「整備士とか裁縫師とか。午前中は刑務所の近くの畑で農作業して、午後は町の工場で働いて、夕方に刑務所に戻ってくる、みたいな感じ。工場での労働は一般の労働者並みの給料がもらえるから、出所後の貯金にできるねん」。
 聞くだけですごい制度です。
「なるほど。たしかに再犯防止に効果がありそうですね。服役中の職業訓練の機会もあるんですか?」「もちろんあるで。数年前にフィジーは「刑務所」って呼び名を「矯正施設」に変更してん。だから、受刑者を仕事ができる状態にして社会に戻す責任が刑務所にはあるんよ」。
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「すごく寛容な社会ですね」「いやいや。そんなことないで。どこの国でも同じやろうけど、受刑者への社会の目はやっぱり厳しいよ。だから、刑務所の職員たちが受刑者の家族や村の人たちに会いにいって、出所後に受け入れてくれるようにお願いしたりもしてるで」。
 イエローリボンプログラムは2008年に始まり、元受刑者の就業率は上がり、再犯率は下がり、かなりの効果が出ているとのこと。国民の受刑者に対するイメージは確実に変わってきているそうです。
「あなたはなぜこの仕事をしようと思ったんですか?」「……実は、僕も元受刑者やねん(笑)。イエローリボンプログラムに救われた1人や。服役中に刑務所関係の事務仕事を担当してたんよね。その成果が認められて、今の仕事に就くことになってん」「えっ……。そうだったんですね。聞いていいのかわかりませんが、何の罪ですか?」「会社で働いてた時に、言われるがままにテキトーにサインしてたら、いつのまにか文書偽造罪になってたわ(笑)」。
 さすがテキトーなフィジーですね。