友愛数

犬のしっぽを撫でながら (集英社文庫)

博士の愛した数式」の小川洋子さんのエッセイを読みました。
日常を離れた世界に連れて行ってもらえて、通勤電車のおともによかったです。

たとえば…
P33
 数学の読み物を手にするうちに、「友愛数」というものに出会いました。「友を愛する数」とは一方の数が他方の数の約数の和になる、ペアになった二つの数字のことです。わかりにくいと思いますので、例を挙げましょう。
 220の約数のうち、それ自身である220を除いた約数は1,2,4,5,10,11,20,22,44,55,110で、これらの和は284になります。一方、284の約数のうち、284を除いたものは1,2,4,71,142で、これらの和は220になります。お互いの約数の和がお互いの数になる。「友愛」で結ばれたペアです。まさに特別な関係です。
 実はこの220と284のペアを発見したのは二千五百年前、ピュタゴラスが率いた集団でした。発見されたのはこの一組だけでしたが、一六三六年にフェルマーが17296と18416のペアを発見。その後、デカルトオイラーが新しい友愛数を発見してゆきます。「友愛」という言葉がとても魅力的です。味気ないと決めつけていた数字の世界に、ロマンを見つけたような気分でした。それまで何の意味も持たなかった二つの数字、220と284が握手し、肩を抱き合っているような、血の通った温かい数字に見えてきたのです。