つづいて・・・

戻りました(^^)また同じ本の中から…

一個人主義

こちらは嵐山光三郎さんです。
P15
 大学時代に、卒業したらこんなことをやってみたいという項目を、100コ書き出してみたんですよ。
 たとえば、寿司を腹いっぱい食う/京都のお茶屋でカオになって遊ぶ/ニューヨークのマンハッタンの一番高級なバーでジャズを聴きながらウィスキーを飲む/雑誌の編集長になる/バーバリーのコートを買う/ヒゲをはやす/ルンペン生活をしてみる/サハラ砂漠横断/モロッコ放浪/アフリカ・タンザニアキリマンジャロ山の麓にハンモックを吊って池波正太郎の捕物帳を読む……。
 で、40歳になってみたら、100項目全部やっちゃっていた。出版社に就職して、36歳で編集長になったし、38歳で退職して、無職になってルンペン生活もできたしね(笑)。
 やりたいことやっちゃって、自分がもぬけのカラになるのかと思ったら、そんなことはないんだな。やりたいことなんか次から次に出てきて、また100項目くらい、すぐに思いついた。
 免許を取ってバイクに乗り始めたのも、ダイビングを始めたのも、40歳を過ぎてからです。温泉の本を書いたり、競輪の記事を書いたりしているのも、40歳のときに「やりたい」と思ったことがきっかけだしね。やりたいことっていうのは、漠然と思っていてもダメなんですよ。できるかどうかは別にして、とにかく具体的に挙げてみることが大事。・・・
 40歳で考えたことはいろいろあったけれども、60歳になってみたら、みんなやっちゃっていた。それで次に考えたのは、60歳を過ぎてから、自分がどう生きるかということ。僕は今66歳だけれども、毎日楽しんでますよ、"下り坂"の人生をね。・・・
 60歳からの僕の人生が、なぜ"下り坂"かというと、それは松尾芭蕉が教えてくれたの。
 40歳のときに考えた100項目の中に、「奥の細道を自転車で走る」というのがあったんです。・・・それを58歳になってから、芭蕉が旅した時期に合わせてやってみた。
 そのときに、長い長い上り坂を走っていて、本当にイヤになった。こんなに必死で漕いでいるのに、まだ上を目指さなきゃならないのかって、弱音も吐きたくなった。
 ところが、てっぺんまで上がってしまうと、今度はながーい下り坂が続くんです。その道は、ペダルは漕がなくていいし、風も感じることができる。もう最高なわけね。その気分というのは、努力して上ってきたからこそ味わえるんであって、これは人生にも通じるなと思ったんですよ。